仇心あだごころ)” の例文
恋は必ず破れる、女心男心は秋の空、必ず仇心あだごころき起り、去年の恋は今年は色がさめるものだと分っていても、だから恋をするなとは言えないものだ。
仇心あだごころなき身ながらも。その様子の高尚なると。学術のほどのしたわれて。われしらず鼻じろむなるべし。勤もかねて聞き伝え。こうもやなど思いつる予想おもいのほかのおとなしさ。
藪の鶯 (新字新仮名) / 三宅花圃(著)
面倒めんどうな気がして、源氏は東琴あずまごと和琴わごんに同じ)を手すさびにいて、「常陸ひたちには田をこそ作れ、仇心あだごころかぬとや君が山を越え、野を越え雨夜あまよ来ませる」という田舎いなかめいた歌詞を、優美な声で歌っていた。
源氏物語:05 若紫 (新字新仮名) / 紫式部(著)
ただ私には仇心あだごころがあり、タカの知れた何物かと遊ばずにはいられなくなる。その遊びは、私にとっては、常に陳腐で、退屈だった。満足もなく、後悔もなかった。
私は海をだきしめていたい (新字新仮名) / 坂口安吾(著)