両脛りょうはぎ)” の例文
いや、そう云う内にも水嵩みずかさますます高くなって、今ではとうとう両脛りょうはぎさえも、川波の下に没してしまった。が、女は未だに来ない。
尾生の信 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
こう云って私の傍に彳んだ岡村君の、肌理きめの細かい白い両脛りょうはぎには、無数の銀砂がうすい靴下を穿いたように附着して居ました。
金色の死 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
切符売場の前で梶棒かじぼうを据えられた時、私は俥から下りようとして、着物の裾が汗ばんだ両脛りょうはぎへ粘り着いた為めに、危く脚を縛られて倒れそうになった。
恐怖 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
私はぐるりと向き直って、枕の上へあごを載せました。と、立て膝をして両脛りょうはぎを八の字に蹈ん張っているナオミの足の、一方は浜田の鼻先に、一方は私の鼻先にあるのです。
痴人の愛 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)