世外せがい)” の例文
「ですから、そこを鄭玄ていげんにとりなしてもらうのです。ともかく、世外せがいの高士に、世俗の働きをさせるところが、この策の妙たるところなんです」
三国志:05 臣道の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
……口上こうじょう申通もうしつうじたばかり、世外せがいのものゆえ、名刺の用意もしませず——住所もまだ申さなんだが、実は、あの稲荷の裏店うらだなにな、堂裏の崩塀くずれべいの中に住居すまいをします。
菊あわせ (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
世の中の競争があまり苦にならない。野々宮さんも広田先生と同じく世外せがいの趣はあるが、世外の功名心こうみょうしんのために、流俗の嗜欲しよくを遠ざけているかのように思われる。
三四郎 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
世外せがいどころか、おせっかいにも、他家よその台所の帳面まで取りよせて、鼻つまみをされる道楽があった。
一世お鯉 (新字新仮名) / 長谷川時雨(著)
茶坊主世外せがいめに厶ります。御老臣ばん様が、殿に言上ごんじょうせいとのことで厶りました。
十万石の怪談 (新字新仮名) / 佐々木味津三(著)
「わしはすでに世外せがいの無用人。国力の興るも亡ぶも、一におん身のべひとつにあるぞ」
梅里先生行状記 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「彼は世外せがいの雅客ですが、あなたにまで、風月に遊べとおすすめ申すのではありません。——高士鄭玄ていげんと、河北の袁紹えんしょうとは共に宮中の顕官であった関係から三代の通家であります」
三国志:05 臣道の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)