上面うわべ)” の例文
眼前にワルトンのつべこべとアイリスに取り入る態度を見てはジョーンの血はたぎった。ジョーンは上面うわべでは大様おおようを装って居た。
決闘場 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
そんな三角関係などは二十余年も以前の事で、上面うわべうに清算されているようだが、きっと何か残っていたに違いないのだ。
血液型殺人事件 (新字新仮名) / 甲賀三郎(著)
従って、表現された「物のあはれ」に没入することは、囚われたる上面うわべを離れて人性の奥底の方向に帰ることを意味する。
日本精神史研究 (新字新仮名) / 和辻哲郎(著)
上面うわべだけは落ち着いた声で(すっかり血の気を失って、胸を激しく波立たせてはいたが)、アマリヤに向かい
「道々しくうるはしきは皆いつはれる上面うわべのことにて、人のまことの情を吟味したるは、かならず物はかなかるべき」ゆえん(石上私淑言下。全集五。五九〇—九一)を説いて
日本精神史研究 (新字新仮名) / 和辻哲郎(著)
新聞に出てたでしょう。あそこの主人は清水っておじいさんで、何とか議員をして上面うわべは立派な紳士なんだけれども、実は卑しい身分から成り上がった成金で、慈悲じひも人情もない高利貸しなのよ。
ニッケルの文鎮 (新字新仮名) / 甲賀三郎(著)