三徳さんとく)” の例文
女にお金を財布さいふぐるみ渡してしまいましたが、女は、私の豪華な三徳さんとくの中をのぞいて、あら、たった一枚? と小声でつぶやき、私は身を切られるほど恥かしく思ったのを忘れずに居る。
虚構の春 (新字新仮名) / 太宰治(著)
未だ三徳さんとく四曼しまん大虚たいこあきらかならず。
女中部屋のへりのない赤ちゃけた畳、びんつけ油のにおい、竹の行李こうりの底から恥かしき三徳さんとく出して、一枚、二枚とくしゃくしゃの紙幣、わが目前にならべられて与えられたような気がして
二十世紀旗手 (新字新仮名) / 太宰治(著)