一風ひとかぜ)” の例文
しかも湯滝ゆだきのあとを踏むように熱く汗ばんだのが、さっ一風ひとかぜ、ひやひやとなった。
春昼 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
すこしく度胸を大きく持ち、今日あって明日なきことの、一風ひとかぜ吹けば散り果てるものだと思うと、悪口もさほど不愉快に感ぜぬのみならず、かえってために一種のおかし味を感ずるものである。
自警録 (新字新仮名) / 新渡戸稲造(著)
落花は繽紛ひんぷん、その時、一風ひとかぜ吹きて。
江戸三国志 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
余程目に染みたものらしく、晩飯の折から、どうかした拍子だった、一風ひとかぜさっと——田舎はこれが馳走ちそうという、青田の風がすだれを吹いて、水のかおりぷんとした時、——ぜんの上の冷奴豆腐ひややっこの鉢の中へ
沼夫人 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)