一痕いっこん)” の例文
茂朝の膝にもたれたまま、光秀は、おもてを天に向けた。一痕いっこんの月を凝視することしばしであった。
新書太閤記:08 第八分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
そのも明けないうちである。王命を果した金将軍は桂月香を背負いながら、人気ひとけのない野原を走っていた。野原のはてには残月が一痕いっこん、ちょうど暗い丘のかげに沈もうとしているところだった。
金将軍 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
お浜は抱きすかして乳房を含めようとすると、その乳房の背に一痕いっこんの血。
大菩薩峠:02 鈴鹿山の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)