一切合切いっさいがっさい)” の例文
しかも不思議なことに、警察のあらゆる努力にもかかわらず、賊の所在ありかは勿論、その素姓も、殺人の動機も一切合切いっさいがっさい不明であった。
恐怖王 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
その名箏めいそうも、あの大正十二年の大震災に灰燼かいじんになってしまった。そればかりではないあの黒い門もなにもかも、一切合切いっさいがっさい燃えてしまったのだ。
江木欣々女史 (新字新仮名) / 長谷川時雨(著)
「へええ、差し上げますには差し上げますですがな。もう一切合切いっさいがっさい種切れで、肴も附け合せも何にもありゃしねえでがす。」
フレップ・トリップ (新字新仮名) / 北原白秋(著)
私の失言も何も一切合切いっさいがっさいひっくるめて押し流し、まるで異った国の樹陰でぽかっと眼をさましたような思いで居られるこの機を逃さず、素知らぬ顔をして話題をかえ
喝采 (新字新仮名) / 太宰治(著)
「なにも私は軽蔑をして、そういう言葉を使ったのではないよ。私の持論から割り出すと、今川であれ北条であれ、浅井であれ朝倉であれ、世のいわゆる武人なるものは、一切合切いっさいがっさい野蛮人なのさ」
神州纐纈城 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
一切合切いっさいがっさい屑繭くずまゆまで売ってのけて、手取てどりが四十九円と二十五銭。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
一切合切いっさいがっさい、何もないのだ、自分もなければ、世界もない。第一存在の感じがない。ただ無、ただ空である。例えば我々が夢も見ず熟睡している時と同じことだ。
白髪鬼 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
お台所に残って在るもの一切合切いっさいがっさい、いろとりどりに、美しく配合させて、手際てぎわよく並べて出すのであって、手数は要らず、経済だし、ちっとも、おいしくはないけれども、でも食卓は
女生徒 (新字新仮名) / 太宰治(著)
加害者は勿論、被害者の身元も、殺人の動機も、一切合切いっさいがっさい不明であった。
吸血鬼 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
何もかも一切合切いっさいがっさい不明であった。
黄金仮面 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)