青い風あおいかぜ
古くから馴染のあるこの海岸へ、彼は十年振りで来て見た。どこもさうであるやうに、ここも震災で丸潰れになつて、柱に光沢の出てゐるやうな家は一つも見当らなかつた。町はどこもがさがさしてゐたが、しとしとした海風は、やつぱり懐しかつた。脚の不自由な人 …