べん)” の例文
斯く入り口又はまどへだてて品物のりをせしは同類どうるいの間ならざるがゆえならん。コロボックル同志どうしならばしたしく相對してことべんぜしなるべし。
コロボックル風俗考 (旧字旧仮名) / 坪井正五郎(著)
はゝ大方おほかたかゝること今朝けさよりの懸念けねんうたがひなく、幾金いくらとねだるか、ぬるき旦那だんなどのゝ處置しよちはがゆしとおもへど、れもくちにてはかちがたき石之助いしのすけべん
大つごもり (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
給仕きふじはおりのこつな一人ひとり引受ひきうけてべんずるのであるが、それにしても、今宵こよひんだかさびぎて、百物語ひやくものがたりといふやうながしてならなかつた。
死刑 (旧字旧仮名) / 上司小剣(著)
現にこのあひだなんとか云ふ男の作つた贋物がんぶつの書画は、作者自身も真贋をべんじなかつたと云つてゐるぢやないか。
鑑定 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
勿論もちろんしよんでふかかんがへたら、みち到達たうたつせずにはゐられまい。しかしさうまでかんがへないでも、日々ひゞつとめだけはべんじてかれよう。これはまつた無頓著むとんちやくひとである。
寒山拾得 (旧字旧仮名) / 森鴎外(著)
何卒御返濟いたし度、色々手段を𢌞めぐらし候得共、頓と御返べん之道も不相付而已のみならず、利息さへもわづか一年ぐらゐ差上候而已のみにて、何とも無わけ仕合に御座候。
遺牘 (旧字旧仮名) / 西郷隆盛(著)
障子を開けると、中は贅澤な八疊で、絹夜具の中に、主人の三七の死骸は寢かされてあり、側には後にめかけのおべんと云つた、二十一二の若い女が打ちしをれて坐つて居ります。
學海居士ガクカイコジ批評ひゝようたいして無用むようべんついやさんとするものにあらず、みぎきたるは、居士コジ批評法ひゝやうほふ如何いか儒教的じゆけふてきなるや、いかに勸善懲惡的くわんぜんてふあくてきなるやをしめさんとしたるのみ
「罪と罰」の殺人罪 (旧字旧仮名) / 北村透谷(著)
てんくらい、くらい、うみおもて激浪げきらう逆卷さかまき、水煙すいゑんをどつて、咫尺しせきべんぜぬ有樣ありさまわたくしでなく、たゞちに球燈きゆうとうてんじてすと、日出雄少年ひでをせうねん水兵等すいへいらひとしくに/\松明たいまつをかざして
〔譯〕心をれいと爲す。其の條理でうり情識じやうしきうごく、之をよくと謂ふ。欲に公私こうし有り、情識の條理に通ずるを公と爲す。條理の情識にとゞこほるを私と爲す。自ら其のつうたいとをべんずるは、即ち心のれいなり。
物事ものごと道理だうりべんじてよく其本そのもとたづぬればすこしも不思儀ふしぎなることにあらず。
改暦弁 (旧字旧仮名) / 福沢諭吉(著)
わたし大變たいへんきました。大船おほふなでおべんひましよう。』
湯ヶ原ゆき (旧字旧仮名) / 国木田独歩(著)
「そしたらおべんさげて行きまほ。」
大阪の宿 (旧字旧仮名) / 水上滝太郎(著)
容器の用は必しも飮食品いんしよくひんたくはふるに在らず、時としては手箱のようをもべんじたるなるべし。
コロボックル風俗考 (旧字旧仮名) / 坪井正五郎(著)
しかしてみづかべんじてはるゝは、作者さくしや趣意しゆいは、殺人犯さつじんはんおかしたる人物じんぶつは、その犯後はんごいかなる思想しそういだくやらんとこゝろもちひて推測おしはか精微せいびじよううつして己が才力を著はさんとするのみと。
「罪と罰」の殺人罪 (旧字旧仮名) / 北村透谷(著)
じつ印度洋インドやう航海かうかいほどおそるべき航海かうかいはない、颶風タイフンや、大強風ストロング、ゲーや、咫尺しせきべんぜぬ海霧シーフ、オツグや、其他そのほか破浪はらう逆潮浪ぎやくてうらうすざまじき、亂雲らんうん積雲せきうん物凄ものすごき、何處いづく航海かうかいにもまぬかれがた海員かいゐん苦難くなんではあるが
米突メートル——二百米突メートルとはへだたらぬのに黒暗々こくあん/\として咫尺しせきべんじない。