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蹲
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うずく
ふりがな文庫
“
蹲
(
うずく
)” の例文
金眸は朝より
洞
(
ほら
)
に
籠
(
こも
)
りて、
独
(
ひと
)
り
蹲
(
うずく
)
まりゐる処へ、
兼
(
かね
)
てより
称心
(
きにいり
)
の、
聴水
(
ちょうすい
)
といふ
古狐
(
ふるぎつね
)
、
岨
(
そば
)
伝ひに雪踏み
分
(
わげ
)
て、
漸
(
ようや
)
く洞の入口まで来たり。
こがね丸
(新字旧仮名)
/
巌谷小波
(著)
岩松の言葉には、もう掛引も
偽
(
うそ
)
もあろうとは思われません。それを聞いて一番驚いたのは、隅の方に
蹲
(
うずく
)
まっていた、縄付の新吉でした。
銭形平次捕物控:037 人形の誘惑
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
そこの床の間の前には、あの人間程の真赤な大蠍が、品子さんを睨みつけるようにして、今にも飛びかからん姿勢で
蹲
(
うずく
)
まっていたのだ。
妖虫
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
と意久地なく落ちかかる
水涕
(
みずばな
)
を洲の立った半天の袖で
拭
(
ふ
)
きながらはるか下って入口近きところに
蹲
(
うずく
)
まり、何やら云い出したそうな素振り
五重塔
(新字新仮名)
/
幸田露伴
(著)
窓の外には一
疋
(
ぴき
)
の古狸が
蹲
(
うずく
)
まっていたが、狸は庄造の姿を見ても別に逃げようともしないのみか、
劫
(
かえ
)
ってうれしそうに尻尾を
掉
(
ふ
)
るのであった。
狸と俳人
(新字新仮名)
/
田中貢太郎
(著)
▼ もっと見る
お銀様が父と言い争っている時分から、この家の縁先の
網代垣
(
あじろがき
)
の下に黒い人影が一つ
蹲
(
うずく
)
まっていて、
父子
(
おやこ
)
の物争いを
逐一
(
ちくいち
)
聞いていたようです。
大菩薩峠:14 お銀様の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
きのうと同じように平七は、裏木戸のそばの馬小屋の前に
蹲
(
うずく
)
まって、有朋が自慢の長靴をせっせと磨いていたところだった。
山県有朋の靴
(新字新仮名)
/
佐々木味津三
(著)
男は、部屋の隅に
蹲
(
うずく
)
まっていた一人の女を招いた。其の女の顔を薄暗い灯の下で見た時、公は思わず雞の死骸を取り落し、殆ど倒れようとした。
盈虚
(新字新仮名)
/
中島敦
(著)
そうした恐ろしい豹が、彼等の背後に
蹲
(
うずく
)
まっていようとは、気の付いていない二人は、今度は
四辺
(
あたり
)
を
憚
(
はばか
)
るように、しめやかに何やら話し始めた。
真珠夫人
(新字新仮名)
/
菊池寛
(著)
源之丞はやはり
蹲
(
うずく
)
まっていた。悪の灯が
仄々
(
ほのぼの
)
と背を照らした。トコトコトコトコと滴たる音。
岩槽
(
いわぶろ
)
へ落ちる水であった。
神州纐纈城
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
ただ
蹲
(
うずく
)
って、手を伸ばし、水を含んだ軟かい泥を掬い上げては、幾たびか揉み揉みして、自分のような小さいものを両手で持っているばかりである。
不周山
(新字新仮名)
/
魯迅
(著)
と、跡に残った一人が障子の外に
蹲
(
うずく
)
まった
気配
(
けはい
)
で、スルスルと障子が
開
(
あ
)
いたから、見ると、
彼女
(
あのおんな
)
だ、
彼女
(
あのおんな
)
に違いない。
平凡
(新字新仮名)
/
二葉亭四迷
(著)
と
四辺
(
あたり
)
を見ますと、一羽の
鸚鵡
(
おうむ
)
がつくねんと樹の
叉
(
また
)
に
蹲
(
うずく
)
まって居りまする。文治は心中に、「さては鸚鵡でありしか」と我ながら
可笑
(
おか
)
しさに耐えず
後の業平文治
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
逸作は入口に待ち合せていた美術記者と、雑誌に載せる作品の相談をして室内を歩き
廻
(
まわ
)
っている。かの女は一人ぽつんとして中央の
椅子
(
いす
)
に小さく
蹲
(
うずく
)
まった。
母子叙情
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
まるで犬は獲物を
嗅
(
か
)
ぎつけた時のように、
蹲
(
うずく
)
まりながら足を留めて、いかにも
要慎
(
ようじん
)
深く、忍んで進みました。
般若心経講義
(新字新仮名)
/
高神覚昇
(著)
枝折戸
(
しおりど
)
の外を、柳の下を、がさがさと
箒
(
ほうき
)
を当てる、
印半纏
(
しるしばんてん
)
の円い
背
(
せなか
)
が、
蹲
(
うずく
)
まって、はじめから見えていた。
妖術
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
どんよりした沼のまんなかに
蹲
(
うずく
)
まっている田舎の処女の姿こそは、私の印象するSUOMIの全部だ。
踊る地平線:05 白夜幻想曲
(新字新仮名)
/
谷譲次
(著)
「そうじゃ。あれに
蹲
(
うずく
)
まって、退屈そうに、独り
牡丹畑
(
ぼたんばたけ
)
の牡丹を見ておる。声をかけてやってくれ」
新書太閤記:06 第六分冊
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
何気なき
体
(
てい
)
で遊戯に誘い入れ、普通本邦婦人が洗濯する体に
蹲
(
うずく
)
まらしめ、急に球を
抛
(
な
)
げると両手で受け留むる
刹那
(
せつな
)
、
股
(
また
)
を開けば女子、股を
狭
(
せば
)
むれば男子とは恐れ入ったろう。
十二支考:10 猪に関する民俗と伝説
(新字新仮名)
/
南方熊楠
(著)
雑草が露の重味で頭を下げ霧に包まれた太陽の
仄白
(
ほのじろ
)
い光りの下に
胡麻
(
ごま
)
の花が開いていた。彼は空を仰ぎ朝の香を胸いっぱい吸った。庭の片隅の野井戸の側に兄が
蹲
(
うずく
)
まっていた。
青草
(新字新仮名)
/
十一谷義三郎
(著)
兄貴のフェリックスは、
蹲
(
うずく
)
まって、
金盥
(
かなだらい
)
をゆすぶり、
獲物
(
えもの
)
を受け取っている。彼らは、
雲脂
(
ふけ
)
に
混
(
まじ
)
って落ちてくる。
剪
(
き
)
った
睫毛
(
まつげ
)
のように細かな
脚
(
あし
)
が、ぴくぴく動くのが見分けられる。
にんじん
(新字新仮名)
/
ジュール・ルナール
(著)
舟にては巨勢が外套を背に着て、
蹲
(
うずく
)
まりゐたるマリイ、これも岸なる人を見ゐたりしが、この時
俄
(
にわか
)
に驚きたる如く、「彼は王なり」と叫びて立ちあがりぬ。背なりし外套は落ちたり。
うたかたの記
(新字旧仮名)
/
森鴎外
(著)
男女は
確乎
(
しっかり
)
と抱きあい、一つになって
蹲
(
うずく
)
まっていたところから変だなと思っていると果然
件
(
くだん
)
の男女は抱きあったまま線路に飛び込み、あわやと思う間に男女共一緒に跳ねとばされたが
芳川鎌子
(新字新仮名)
/
長谷川時雨
(著)
と言いながら、小柄な身体を二つに折るようにして伝兵衛のそばへ
蹲
(
うずく
)
まり
平賀源内捕物帳:山王祭の大像
(新字新仮名)
/
久生十蘭
(著)
○床の間に
虞美人草
(
ぐびじんそう
)
を二輪
活
(
い
)
けてその下に
石膏
(
せっこう
)
の我
小臥像
(
しょうがぞう
)
と一つの木彫の猫とが置いてある。この猫は
蹲
(
うずく
)
まつて居る形で、実物大に出来て居つて、さうして黄色のやうなペンキで塗つてある。
病牀六尺
(新字旧仮名)
/
正岡子規
(著)
しかし私は既定の方針通りにじっと
蹲
(
うずく
)
まっておればよいのである。しばらくして彼らはまた元通りに鳴き出した。この瀬にはことにたくさんの河鹿がいた。その声は瀬をどよもして響いていた。
交尾
(新字新仮名)
/
梶井基次郎
(著)
雁坂
(
かりさか
)
山は甲武信の左下に、
破風
(
はふ
)
山は木賊の右下に、共に
蹲
(
うずく
)
まっている。
望岳都東京
(新字新仮名)
/
木暮理太郎
(著)
ああマヌエラ、塩を雪のようにかぶって起きあがったとき、一つ二つ、臨終そのままの姿であるいは立ち、あるいは
蹲
(
うずく
)
まり、あるいは腕を曲げ、ゴリラや黒猩々が浮き彫りのように現われてくる。
人外魔境:01 有尾人
(新字新仮名)
/
小栗虫太郎
(著)
二、三度彼は、何か人の横たわっているようにもまた
蹲
(
うずく
)
まっているようにも見えるものの方へ、野の中をかけて行った。がそれはただ
荊棘
(
いばら
)
であったり、地面に出てる岩であったりするきりだった。
レ・ミゼラブル:04 第一部 ファンテーヌ
(新字新仮名)
/
ヴィクトル・ユゴー
(著)
そうして、フラフラと倒れようとして、辛うじて床に
蹲
(
うずく
)
まりながら
殺人迷路:10 (連作探偵小説第十回)
(新字新仮名)
/
甲賀三郎
(著)
彼は綾瀬口の渡しを越えて向う河岸の
枯蘆
(
かれあし
)
の間に身を潜めながら、農科の艇の漕ぎ下るのを待っていた。妙な緊張した不安に襲われながら、彼は少し
湿々
(
じめじめ
)
した土地に腰を下ろして夕日の中に
蹲
(
うずく
)
まった。
競漕
(新字新仮名)
/
久米正雄
(著)
お鳥は思案に暮れて、部屋の入口に
蹲
(
うずく
)
まりました。入ったものか、逃げ帰ったものか、全く分別が付かなかったのです。
裸身の女仙
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
竜之助が動かないから、お銀様もまた、その近いところへ
蹲
(
うずく
)
まりました。ここは誰も人の来る憂えのないところです。
大菩薩峠:15 慢心和尚の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
「浜には沢山人がいた。
干潟
(
ひがた
)
に貝が散っていた。そこで逢った一人の女! その時見た女の眼!」源之丞は
蹲
(
うずく
)
まった。
神州纐纈城
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
長い竹藪の
間々
(
あいだあいだ
)
には、ありとあらゆる
魑魅魍魎
(
ちみもうりょう
)
が、ほのかな隠し電燈の光を受けて、或は
横
(
よこた
)
わり、或は
佇
(
たたず
)
み、或は
蹲
(
うずく
)
まり、或は空からぶら下っていた。
悪魔の紋章
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
我子
(
わがこ
)
の寝て居ります側に
蹲
(
うずく
)
まって居ります様子、お町は薄気味悪く、熊の正面に向いまして、人間に物いうように
後の業平文治
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
苦しさに堪えかねて、
暫時
(
しばし
)
路傍
(
みちのべ
)
に
蹲
(
うずく
)
まるほどに、夕風
肌膚
(
はだえ
)
を侵し、
地気
(
じき
)
骨に
徹
(
とお
)
りて、
心地
(
ここち
)
死ぬべう覚えしかば。
こがね丸
(新字旧仮名)
/
巌谷小波
(著)
するといくらか気が静まって来て、小粒に光りながら
緩
(
ゆる
)
んだ綴目の穴から出て本の背の角を
匍
(
は
)
ってさまよう
蠧魚
(
しみ
)
の
行衛
(
ゆくえ
)
に瞳を
捉
(
とら
)
えられ思わずそこへ
蹲
(
うずく
)
まった。
宝永噴火
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
暗い片隅に
蹲
(
うずく
)
まっている人間の姿が、差し向けられたカンテラの灯で、
朧
(
おぼ
)
ろげながら
判
(
わか
)
って来た。
真珠夫人
(新字新仮名)
/
菊池寛
(著)
建物の前には黒い虎の
蹲
(
うずく
)
まっているような
脱沓
(
くつぬぎ
)
石があった。広巳は
室
(
へや
)
の中を見た。室の中には二十七八に見える
面長
(
おもなが
)
の色のくっきり白い女が、侵されぬ気品を見せて坐っていた。
春心
(新字新仮名)
/
田中貢太郎
(著)
その足もとに
蹲
(
うずく
)
まって、大地に天蓋を摺りつけて詫びているのは、鼠木綿の見すぼらしい虚無僧で、一人は、片輪と罵られている通り、脚絆の足を不自由そうに曲げ、連れの一人は
剣難女難
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
「どうしたんだね、」と婆さんは膝に手を乗せて
蹲
(
うずく
)
まったまま呆れて見ている。
湯島詣
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
その道でとうとう私は迷ってしまい、途方に暮れて
暗
(
やみ
)
のなかへ
蹲
(
うずく
)
まっていたとき、
晩
(
おそ
)
い自動車が通りかかり、やっとのことでそれを呼びとめて、予定を変えてこの港の町へ来てしまったのであった。
冬の蠅
(新字新仮名)
/
梶井基次郎
(著)
何時間
経
(
た
)
ったか、
久
(
しば
)
らくすると、部屋の障子がスッと
開
(
あ
)
いた。振向いて見ると、思いがけずお糸さんが入口に
蹲
(
うずく
)
まって、両手を突いて、
先刻
(
さっき
)
の礼を又言ってお辞儀をする。私は何となく嬉しかった。
平凡
(新字新仮名)
/
二葉亭四迷
(著)
象の脚元に
蹲
(
うずく
)
まっている一人の男。
平賀源内捕物帳:山王祭の大像
(新字新仮名)
/
久生十蘭
(著)
此方
(
こなた
)
のお町は
隅
(
すみ
)
の方に
蹲
(
うずく
)
まり、両手を合せて一心に
神仏
(
かみほとけ
)
を念じて居りますと、何か落ちて手の甲に当りました。
後の業平文治
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
暗闇に立っていること
故
(
ゆえ
)
大丈夫とは思ったけれど、二人は充分用心して、屋内から
隙見
(
すきみ
)
されてもそれと気附かれぬ様、ドアのすぐ横に
蹲
(
うずく
)
まって様子を窺った。
魔術師
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
口々に
罵
(
ののし
)
り乍ら、赤い
襷
(
たすき
)
、白い
扱帯
(
しごき
)
、黄色い帯止めと、あらゆる紐を四方から投げ掛け、恐れ入って
蹲
(
うずく
)
まる青侍を、あろうことか、キリキリと縛り上げてしまったのです。
奇談クラブ〔戦後版〕:06 夢幻の恋
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
瑠璃子は、その問を無視したように、黙って
椅子
(
いす
)
から立ち上ると、鉄盤で
掩
(
おお
)
うてあるストーヴの前に先刻三度目に着替えた江戸紫の
金紗縮緬
(
きんしゃちりめん
)
の
袖
(
そで
)
を気にしながら、
蹲
(
うずく
)
まった。
真珠夫人
(新字新仮名)
/
菊池寛
(著)
如来衛門と乾児の者はじっと地面に
蹲
(
うずく
)
まり
咳
(
しわぶき
)
一つしなかった。こうして時が経って行く。
蔦葛木曽棧
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
“蹲(つくばい)”の解説
つくばい(蹲踞、蹲)とは、日本庭園の添景物の一つで露地(茶庭)に設置される。茶室に入る前に、手を清めるために置かれた背の低い手水鉢に役石をおいて趣を加えたもの。
(出典:Wikipedia)
蹲
漢検1級
部首:⾜
19画
“蹲”を含む語句
蹲踞
蹲居
蹲跼
蹲螭
落蹲
犬蹲
掻蹲
蹲石
蹲裾
蹲跪
蹲踞込
蹲躅
蹲込