おう)” の例文
とう時、わたしの一家は長さきんでゐた。その長さきには、下岡蓮杖おうならんで、日本寫しんかい元祖ぐわんそである上野彦馬おうが同じくんでゐた。
四十一ねんぐわつ二十一にち午前ごぜんごろ水谷氏みづたにしとは、大森おほもり兒島邸こじまてい訪問ほうもんした。しかるにおうは、熱海あたみはうつてられて、不在ふざん
また本居宣長もとおりのりながおうもやはり『古事記伝』の初めの総論に「仮字かなの事」という条に、明らかに音の区別であったといっているのであります。
古代国語の音韻に就いて (新字新仮名) / 橋本進吉(著)
西郷隆盛さいごうたかもりのそばにいると心地ここちよくおう身体からだから後光ごこうでも出ているように人は感じ、おうは近づくとえりを正さねばならぬほど威厳いげんがあった。
自警録 (新字新仮名) / 新渡戸稲造(著)
それから一月ひとつきばかりののち、そろそろ春風しゅんぷうが動きだしたのをしおに、私は独り南方へ、旅をすることになりました。そこでおうにその話をすると
秋山図 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
この『北越雪譜』の著者鈴木牧之おうは、越後の塩沢しおざわの商人で、時々商用で上京した時に当時のいわゆる文人ぶんじん雅客がかくまじわりを結んではいたものの
語呂の論理 (新字新仮名) / 中谷宇吉郎(著)
ただしはまた今日我々が昔の遊女として考えている女性が、おうの時代にはなお「田舎いなかわたらひ」という生活をしていたのか。
木綿以前の事 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
朝早く露西亜の中部スチエキノ停車場から百姓の馬車に乗ってトルストイおうのヤスナヤ、ポリヤナにおもむく時、朝露にぬれそぼった小麦畑を通ると
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
おう令息れいそく有名ゆうめい石本新六男いしもとしんろくだんがあり、新六男しんろくだん四男よなん地震學ぢしんがく有名ゆうめい巳四雄教授みしをきようじゆのあることは、李蹊りけいおうまたもつめいするにるといはれてもよいであらう。
地震の話 (旧字旧仮名) / 今村明恒(著)
「(前略)昔はだいぶ評判の事であったが、このごろは全くその沙汰さたがない、根拠の無き話かと思えば、「土佐今昔物語」という書に、沼澄ぬまずみ鹿持雅澄かもちまさずみおう
怪異考 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
これは「電球にからまる怪異」の話とともに、大正三年ごろハワイに住っていた田島金次郎おう土産話みやげばなしである。
机の抽斗 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
おうは、半白はんぱくの髪の延びた頭を抱えて、教壇のテーブルに向って、プラスマイナス×マルチプライの講義をやる。
(新字新仮名) / 小川未明(著)
見るに今夜こくに死する者がかくすこやかに有べき樣もなし如何なればおうが斯樣の事を云しかと不審ふしんするも道理ことわりぞかし然れば靱負は甚だ氣色きしよくそんじ居ける故主は昨日もらひし金子きんすにてさけさかな
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
この稿を草するなかばにして、曙覧おう令嗣れいし今滋いましげ氏特に草廬そうろたたいて翁の伝記及び随筆等を示さる。って翁の小伝を掲げて読者の瀏覧りゅうらんに供せんとす。歌と伝と相照し見ば曙覧翁眼前にあらん。
曙覧の歌 (新字新仮名) / 正岡子規(著)
すずおうの書斎もその儘に残っているそうでございますよ」
ぐうたら道中記 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
おうは、娘や孫娘をよんで、夫人の世話をさせた。
三国志:06 孔明の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
この話は明治四十三年十月、田島金次郎おうがその時京都にいた喜多村緑郎ろくろう氏を訪問した際に、その席上にいあわしていた医師某が、真面目な知人の話だと云って話した話である。
長崎の電話 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
東湖先生とうこせんせい最後さいごのありさまはよくひとられてゐるが、石本李蹊いしもとりけいおうのはひとすくない。
地震の話 (旧字旧仮名) / 今村明恒(著)
「イ」「エ」「オ」音と「ウィ」「ウェ」「ウォ」音との別を表わすものであるということが本居宣長もとおりのりながおうの時代に明らかになり、そうしてもう一つのエにあたる仮名の二類の区別も
古代国語の音韻に就いて (新字新仮名) / 橋本進吉(著)
威厳はあるが、なんとなく惹きつけられるようで近づきたくなり、いよいよ近づいてもれて失礼することはできぬというふうであった。これ全くおうの心のそとにあらわれたがためである。
自警録 (新字新仮名) / 新渡戸稲造(著)
こういう人生の片隅かたすみの寂しさをも、見落さなかったのがわがおうの俳諧であった。
木綿以前の事 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
牧之おうののべた如く、初めは屋根から地上に下ろすのであるが、一夜に五尺六尺という降雪を見ることが稀でないのであるから、家屋のそば空地あきち、道路はたちまち下ろされた雪を以て高くなり
(新字新仮名) / 中谷宇吉郎(著)
班女はんじょといい、業平なりひらという、武蔵野むさしのの昔は知らず、遠くは多くの江戸浄瑠璃じょうるり作者、近くは河竹黙阿弥もくあみおうが、浅草寺せんそうじの鐘の音とともに、その殺し場のシュチンムングを、最も力強く表わすために
大川の水 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
そのころおう直接ちよくせつ撮影塲さつえいぜうに出るといふやうなことはなかつたが、あたまのすつかり銀髮ぎんはつになつた、ひたいひろい、あごの角張かどはつたおうかほを、この人が寫眞しやしん元祖ぐわんそだといふ風な一しゆ敬意けいいを以てながめたことが
老齡ろうれい力の衰頽すいたいと、これはかなしい事に如何ともしかたいものだからだ。ぼくは出でてたゝかはざる如き棋士きしは如何なる力ありとも到底とうてい尊敬そんけい出來ぬが、その意味いみでは小菅おうことばに同かんあたはぬでもない。
安政二年あんせいにねん十月二日じゆうがつふつか江戸大地震えどだいぢしんおいて、小石川こいしかは水戸屋敷みとやしきおい壓死あつしした藤田東湖先生ふぢたとうこせんせい最後さいごと、麹町かうじまち神田橋内かんだばしない姫路藩邸ひめぢはんていおい壓死あつしした石本李蹊いしもとりけいおう最後さいごまつたおなてつまれたものであつた。
地震の話 (旧字旧仮名) / 今村明恒(著)
落書らくがきに恋しき君が名もありて おう
木綿以前の事 (新字新仮名) / 柳田国男(著)