かご)” の例文
くさむらの陰から子供の歌がきこえる。やがて子供四人登場。女の子ばかり。手ぬぐいをかぶり、かごを持っている。唯円、かえで離れる。
出家とその弟子 (新字新仮名) / 倉田百三(著)
かごを取りいた連中は、サンドヰツチをした。すこしのあひだは静であつたが、思ひした様に与次郎が又広田先生に話しかけた。
三四郎 (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
村落には石のいどがあって、その辺は殊にやなぎが多い。楊の下にはしん国人がかごをひらいてかにを売っている。蟹の大なるは尺を越えたのもある。
綺堂むかし語り (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
薄い白楊はこやなぎの板を曲げて拵らえた箱だの、白樺の皮で編んだかごだの、その他貧富の別なくロシア人が日常つかうさまざまな道具の山であった。
清の雍正ようせい年間。草原。処々に柳の立木あり。その間に荒廃せる礼拝堂見ゆ。村の娘三人、いずれもかごを腕にかけつつ、よもぎなぞを摘みつつあり。
上海游記 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
その時はおん身にられしかごの中なる兒は、知らぬ牧者の妻となりて、おん身が前にぬかづくならん。おん身は人におごるやうにはなり給はじ。
手のこんだ瓦葺の屋根を書くのには長い時間を要するから、私はやらなかった。左手には傘を入れたかごが見えている。
巨人また石を拾うて天に向ってほうると雲を凌いでまた還らぬ、縫工兼ねて餌食にとかごに入れ置いた生鳥を出し石と称して抛り上げると飛び上がって降りて来ぬ
どりゃ、太陽そのゆるやうなまなこげて今日けふひるなぐさめ、昨夜さくや濕氣しっきかわかまへに、どくあるくさたふとしるはなどもをんで、吾等われらこのかごを一ぱいにせねばならぬ。
そんなみちみち私の出遇であうのは、ごくまれには散歩中の西洋人たちもいたが、大概たいがい、枯枝を背負せおってくる老人だとかわらびとりの帰りらしいかごうでにぶらさげた娘たちばかりだった。
美しい村 (新字新仮名) / 堀辰雄(著)
幕府にとって、伊達家は籃中びくの魚であり、どうじたばたしてもそのかごからのがれることはできないし、へたに暴れだせばかえって爼上そじょうにのせられる、ここはがまんすべきときだ。
あんずるに、火の原因おこりは、昼、初春はるうたげに、たくさんな花籃はなかごが持ち込まれており、上には、蝶花の祭りかんざしがたくさんしてあったが、かごの底には、硫黄いおう焔硝末えんしょうまつ、火薬玉などが
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「はて、返事がえの、し可し。」とかごりたる菓子をつまめば、こらえかねて
貧民倶楽部 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
『もっと、もっと、もっと胡桃くるみを拾って! 君達のかご一杯にするんだよ。そしたら、クリスマス時分には、僕がみんなにそれを割って上げて、いろいろいい話を聞かして上げるからね!』
お峯は羽織のひもを解きつ結びつして、言はんか、言はざらんかをためらへる風情ふぜいなるを、ひて問はまほしき事にはあらじと思へば、貫一はかごなる栗を取りてきゐたり。彼はしばらく打案ぜし後
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
たんとやいたとり餌料ゑさてはみんなかごからばさ/\とびおりてこツこツときながらつめき/\あらそうてつゝいた。勘次かんじつひとりかず不足ふそくしてることをたしかめざるをなかつた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
芥川龍之介氏の句に「漢口」という前書で「一かごの暑さてりけり巴旦杏はたんきょう
古句を観る (新字新仮名) / 柴田宵曲(著)
満ちたる大いなるかごと五升入りの徳利とを両手にげて訪い来たれり
空家 (新字新仮名) / 宮崎湖処子(著)
木村の持って来た果物くだものをありったけかごにつめて
或る女:1(前編) (新字新仮名) / 有島武郎(著)
すると清子はそのかごをすぐ下女に渡した。下女はどうしていいかわからないので、器械的に手を出してそれを受取ったなり、黙っていた。
明暗 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
猴は初めから棗に眼を付けたが少しも気色にあらわさねば誰もこれを知らず、猴初めは棗入れたかごに近寄るを好まぬようだったが芸をやりながら漸次これに近付き
そして彼らについて出て見ると、園の蓄水池ちくすいちほとり、涼しげな楊柳ようりゅうの木蔭に、むしろをのべ、酒壺さかつぼを備え、かごには肉の料理やら果物くだものを盛って、例の与太もン二、三十が恐れかしこんで待っている。
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「われわれが先ず上がって、それからお前をかごにのせて吊りあげてやる」
かごをさし出す)もうこんなにたんとになってよ。
出家とその弟子 (新字新仮名) / 倉田百三(著)
ひとかごの暑さ照りけり巴旦杏
雑信一束 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
彼の車室内へ運んでくれた果物くだものかごもあった。そのふたを開けて、二人の伴侶つれに夫人の贈物をわかとうかという意志も働いた。
明暗 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
かごの中から野菊を出して地蔵の前に立てる)
出家とその弟子 (新字新仮名) / 倉田百三(著)
申し合せたように、舟中ふねじゅう立ち上ってかごの内を覗くと、七八寸もあろうと云う魚が、縦横に狭い水の中をけ廻っていた。
彼岸過迄 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
千代子は面白半分それを受取って水の中で動かそうとしたが、動きそうにもしないので、高木はおのれの手を添えて二人いっしょにかごの中を覚束おぼつかなくき廻した。
彼岸過迄 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
美禰子は其そばすはつて、かごなかのものを小皿へ取り分けてゐる。与次郎と美禰子の問答が始つた。
三四郎 (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
いてもくつて」と聞いた。其を見た時に、三四郎は今朝けさかごげて、折戸からあらはれた瞬間の女を思ひした。おのづから酔つた心地である。けれども酔つてすくんだ心地である。
三四郎 (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
重そうにかごげている清子の様子を見た津田は、ほとんどこう云いたくなった。
明暗 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
花を墓に、墓に口を接吻くちづけして、きわれを、ひたふるに嘆きたる女王は、浴湯をこそと召す。ゆあみしたるのち夕餉ゆうげをこそと召す。この時いやしき厠卒こものありて小さきかご無花果いちじくを盛りて参らす。
虞美人草 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)