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破風
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はふ
ふりがな文庫
“
破風
(
はふ
)” の例文
家の中には生木の薪を焚く煙が、物の置所も
分明
(
さだか
)
ならぬ程に
燻
(
くすぶ
)
つて、それが、日一日
破風
(
はふ
)
と誘ひ合つては、腐れた屋根に這つてゐる。
赤痢
(旧字旧仮名)
/
石川啄木
(著)
その家は、オランダから持ってきた黄色い小さな
煉瓦
(
れんが
)
で建てられ、
格子窓
(
こうしまど
)
があって、正面は
破風
(
はふ
)
造りで、棟には風見がのっていた。
リップ・ヴァン・ウィンクル:ディードリッヒ・ニッカボッカーの遺稿
(新字新仮名)
/
ワシントン・アーヴィング
(著)
總檜
(
そうひのき
)
の
破風
(
はふ
)
造り、
青銅瓦
(
せいどうがはら
)
の
錆
(
さび
)
も物々しく、數百千種の藥草靈草から發する香氣は、
馥郁
(
ふくいく
)
として音羽十町四方に匂つたと言はれるくらゐ。
銭形平次捕物控:001 金色の処女
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
教会と市役所のあいだには、広場をとりかこんで、さまざまの
飾
(
かざ
)
りのついた、見るも美しい
破風
(
はふ
)
のある家々が立ち
並
(
なら
)
んでいました。
ニールスのふしぎな旅
(新字新仮名)
/
セルマ・ラーゲルレーヴ
(著)
田舎の家からは、朝な夕なに
甲武信
(
こぶし
)
三山を始め、
破風
(
はふ
)
雁坂
(
かりさか
)
から雲取に至る長大なる連嶺を眺めて、絶えず心を惹かれていたのに。
思い出す儘に
(新字新仮名)
/
木暮理太郎
(著)
▼ もっと見る
そして、屋根の
破風
(
はふ
)
というものがないから、掘立小屋みたいだ。王朝時代、多年
苛斂誅求
(
かれんちゅうきゅう
)
に苦しめられた風が残っているためかも知れない。
淡紫裳
(新字新仮名)
/
佐藤垢石
(著)
ふはりと隣家の
破風
(
はふ
)
を
掠
(
かす
)
めて
鴎
(
かもめ
)
が一つ浮いて出た。青み初めた空から太陽がわづかに赤い
鱗
(
うろこ
)
を振り落した。まじめな朝が若い
暁
(
ごぜん
)
と交代する。
雪
(新字旧仮名)
/
岡本かの子
(著)
破風
(
はふ
)
の格子扉に掲げている能面を眺めていると、まるで、全身を逆さに撫で上げられるような不気味な感覚に襲われるものだ。
黒死館殺人事件
(新字新仮名)
/
小栗虫太郎
(著)
地方によっては普通の農民に、
瓦葺
(
かわらぶ
)
きや
破風
(
はふ
)
作り等の家を許さず、たまたま領主に対して功労のあったものにのみ、特典としてこれを認めた。
家の話
(新字新仮名)
/
柳田国男
(著)
破風
(
はふ
)
屋根の多い小路小路はじめじめして風がひどく、時折、氷とも雪ともつかぬ、柔らかい
霰
(
あられ
)
のようなものが降って来た。
トニオ・クレエゲル
(新字新仮名)
/
パウル・トーマス・マン
(著)
この建物は非常に古く、
破風
(
はふ
)
や、どっしりと瓦をのせた屋根や、大きな屋の棟や、
岩畳
(
がんじょう
)
な入口は、かかる荘厳な住宅建築の典型的のものである。
日本その日その日:03 日本その日その日
(新字新仮名)
/
エドワード・シルヴェスター・モース
(著)
久女八が土蜘蛛をやっている、能がかりで評判なあの糸が、
破風
(
はふ
)
か、棟から抜出したんだろう。そんな事を、
串戯
(
じょうだん
)
でなくお思いなすったそうです。
薄紅梅
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
七兵衛はソロソロと天井裏を
這
(
は
)
い出して
破風
(
はふ
)
を抜け、いつか廊下の下へおり立って見ると、そこへあつらえたように置き据えられた朱塗の
賽銭箱
(
さいせんばこ
)
。
大菩薩峠:23 他生の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
牀
(
ゆか
)
は低いけれども、かいてあるにはあった。其替り、天井は
無上
(
むしょう
)
に高くて、而も
萱
(
かや
)
のそそけた屋根は、
破風
(
はふ
)
の脇から、むき出しに、空の星が見えた。
死者の書
(新字新仮名)
/
折口信夫
(著)
家々にも街頭にも灯ははいり始めたが、まだ暮れ切らない空の向うを、教会の尖塔や風変りな
破風
(
はふ
)
屋根をもった山手の高台のシルウェットが
劃
(
かぎ
)
っている。
狼疾記
(新字新仮名)
/
中島敦
(著)
左に続いて離れ屋と茶室があり、そのうしろに主が『望翠楼』と
号
(
つ
)
けている高二階、
破風
(
はふ
)
造りの閣が建っていた。
夜明けの辻
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
日当りのいい縁側で、彼は
鬚
(
ひげ
)
を剃った。鏡の中には彼の顔と、そのうしろに遠く、白木の家の
破風
(
はふ
)
が見えていた。白木は昨夜遅く帰ってきたらしかった。
黄色い日日
(新字新仮名)
/
梅崎春生
(著)
その方角にも迷ったのでしょう、車寄せの
破風
(
はふ
)
から足を回して、ふたたび大屋根の浅瀬を駆けながら、当番所、納戸前、
御台所
(
みだいどころ
)
の上まで伝わって来ますと
江戸三国志
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
落合の小松の邸はいくつも
破風
(
はふ
)
をもったエリザベス朝式の建築で、ポーチには白い柱がならび、バルコンには獅子の紋章を浮き出しにした古風な金具がつき
ハムレット
(新字新仮名)
/
久生十蘭
(著)
破風
(
はふ
)
は正面に向いていて、家の他の部分全体ほどの大きさの
軒蛇腹
(
のきじゃばら
)
が
檐
(
のき
)
と表口との上にある。窓は狭くて奥深く、窓ガラスが非常に小さくて窓枠がたくさんある。
鐘塔の悪魔
(新字新仮名)
/
エドガー・アラン・ポー
(著)
眼を上げるとそこに本願寺の
破風
(
はふ
)
が暮残ったあかるい空を遠く涙ぐましくくぎっているのである。……
雷門以北
(新字新仮名)
/
久保田万太郎
(著)
たとえばその沙門に化けた天狗が、この屋形の姫君に心を懸けて、ある夜ひそかに
破風
(
はふ
)
の空から、爪だらけの手をさしのべようも、全くない事じゃとは誰も云えぬ。
邪宗門
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
それらの牢獄みたいな人家の一つ——入口には巨人の裸体像が二つある低い二階建ての、古代エジプトの王宮に似た家——の
破風
(
はふ
)
に、建築家はこう書きしるしていた。
ジャン・クリストフ:06 第四巻 反抗
(新字新仮名)
/
ロマン・ロラン
(著)
正面の
破風
(
はふ
)
もやはり、建築師がどんなに苦心しても、家の中央へ持って来ることが出来なかった。
死せる魂:01 または チチコフの遍歴 第一部 第一分冊
(新字新仮名)
/
ニコライ・ゴーゴリ
(著)
噴火口と
擬
(
まが
)
いそうな欠けたところが、大屋根の
破風
(
はふ
)
のように
聳
(
そび
)
えて、霧を吐く窓になっている。
白峰山脈縦断記
(新字新仮名)
/
小島烏水
(著)
今日なお、ジュナップにはいる数分前の所、道の右側にある
煉瓦
(
れんが
)
の
破屋
(
あばらや
)
の古い
破風
(
はふ
)
に、その霰弾の連発の跡が刻まれてるのが見られる。プロシア軍はジュナップに突入した。
レ・ミゼラブル:05 第二部 コゼット
(新字新仮名)
/
ヴィクトル・ユゴー
(著)
此諸人の
気息
(
いき
)
正月三日の寒気ゆゑ
烟
(
けふり
)
のごとく
霧
(
きり
)
のごとく
照
(
てら
)
せる
神燈
(
じんとう
)
もこれが
為
(
ため
)
に
暗
(
くら
)
く、人の
気息
(
いき
)
屋根うらに
露
(
つゆ
)
となり雨のごとくに
降
(
ふり
)
、人気
破風
(
はふ
)
よりもれて雲の立のぼるが如し。
北越雪譜:06 北越雪譜二編
(新字旧仮名)
/
鈴木牧之
、
山東京山
(著)
綱
(
つな
)
がはっと
思
(
おも
)
う
間
(
ま
)
に、おばさんはみるみる
鬼
(
おに
)
の
姿
(
すがた
)
になって、
空
(
そら
)
に
飛
(
と
)
び
上
(
あ
)
がりました。そして
綱
(
つな
)
が
刀
(
かたな
)
を
取
(
と
)
って
追
(
お
)
いかけるひまに、
破風
(
はふ
)
をけ
破
(
やぶ
)
って、はるかの
雲
(
くも
)
の中に
逃
(
に
)
げて行きました。
羅生門
(新字新仮名)
/
楠山正雄
(著)
本殿の
眞後
(
まうしろ
)
へ𢌞はつた時、
斜
(
なゝめ
)
に
破風
(
はふ
)
の方を
仰
(
あふ
)
ぎながら、お光はこんなことを言つた。
東光院
(旧字旧仮名)
/
上司小剣
(著)
門内の樹林や馬車廻しの樹立ちも大抵は葉を振り落して、朝の登館のときなど、裸か木の枝ごしにずつと遠くの方から、折からの遅い朝日を受けて例の
破風
(
はふ
)
の紋章のきらめいてゐるのが目にはいる。
灰色の眼の女
(新字旧仮名)
/
神西清
(著)
閉
(
は
)
ねて出ると、高い劇場の
破風
(
はふ
)
に、有名な四頭の馬がひく戦車の彫刻が、夜の雲をめざして飛ぼうとしていた。露のおりた石の道を馬車で帰る。霧のなかから浮かび出て霧へ消える建物。ひづめの音。
踊る地平線:01 踊る地平線
(新字新仮名)
/
谷譲次
(著)
屋根あり、
破風
(
はふ
)
ありて、
家屋
(
かをく
)
の
上
(
うへ
)
に
峙
(
そばだ
)
つは
牧羊神
(旧字旧仮名)
/
上田敏
(著)
破風
(
はふ
)
をもる煙かすかに
故郷の花
(旧字旧仮名)
/
三好達治
(著)
けれども、男よりも女よりも、もっともっとふしぎに見えるのは、この
都
(
みやこ
)
です。どの家も、
破風
(
はふ
)
が通りに
面
(
めん
)
するようにつくられています。
ニールスのふしぎな旅
(新字新仮名)
/
セルマ・ラーゲルレーヴ
(著)
池鯉鮒よりで気の付いたことには、家の造りが
破風
(
はふ
)
を前にして東京育ちの私には横を前にして建ててあるように見えた。主人は
東海道五十三次
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
第二は甲武信岳附近から
雁坂
(
かりさか
)
峠に至る甲武信山塊、
破風
(
はふ
)
、雁坂山を含むもの。第三は雁坂峠から
将監
(
しょうげん
)
峠に至る
古礼
(
これい
)
山、唐松尾の連脈を含むもの。
奥秩父の山旅日記
(新字新仮名)
/
木暮理太郎
(著)
家の中には、生木の薪を焚く煙が、物の置所も
分明
(
さだか
)
ならぬ程に
燻
(
くすぶ
)
つて、それが、日一日、
破風
(
はふ
)
から破風と誘ひ合つては、腐れた屋根に這つてゐる。
赤痢
(新字旧仮名)
/
石川啄木
(著)
破風
(
はふ
)
を押破った竜之助は、屋根の上へのたり出でたもののようです。それでも刀と脇差だけは、下げ緒で帯へしかと結んでいたものらしくあります。
大菩薩峠:17 黒業白業の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
いや出るが早いか、
鎧櫃
(
よろいびつ
)
には必ず付いている
荷担革
(
にないがわ
)
に
双手
(
もろて
)
をさしこみ、それを背に負ったと思うと、もう例の
破風
(
はふ
)
を
足
(
あし
)
がかりとして、大屋根の天ッ辺に立ち
新・水滸伝
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
真昼間
(
まっぴるま
)
、向う側から
密
(
そっ
)
と
透
(
すか
)
して見ると、窓も
襖
(
ふすま
)
も
閉切
(
しめき
)
つて、空屋に等しい暗い中に、
破風
(
はふ
)
の
隙
(
ひま
)
から、
板目
(
いため
)
の
節
(
ふし
)
から、
差入
(
さしい
)
る日の光
一筋
(
ひとすじ
)
二筋
(
ふたすじ
)
、
裾広
(
すそひろ
)
がりにぱつと
明
(
あかる
)
く
処方秘箋
(新字旧仮名)
/
泉鏡花
(著)
屋根の
破風
(
はふ
)
の
下見
(
したみ
)
をすこしばかり毀しますから、窮屈でもどうかそこからお入りなすってください
顎十郎捕物帳:24 蠑螈
(新字新仮名)
/
久生十蘭
(著)
出て来たのは、名もないものであり、奇体な
捏
(
ね
)
り細工だった。殿堂の
破風
(
はふ
)
をささうべき堅固な円柱どころか、
廃
(
すた
)
れた泥建築のように、和音は次から次へと崩壊していった。
ジャン・クリストフ:06 第四巻 反抗
(新字新仮名)
/
ロマン・ロラン
(著)
門や
破風
(
はふ
)
や玄關はさすがに
憚
(
はゞか
)
つて、町人の住居らしい格子造りですが、何んとなく幅つたくてピカピカして、僅かに
庇
(
ひさし
)
に覗かせた
銅瓦
(
どうがはら
)
の
贅
(
ぜい
)
も、意地の惡い役人に引つ掛つたら
銭形平次捕物控:223 三つの菓子
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
此諸人の
気息
(
いき
)
正月三日の寒気ゆゑ
烟
(
けふり
)
のごとく
霧
(
きり
)
のごとく
照
(
てら
)
せる
神燈
(
じんとう
)
もこれが
為
(
ため
)
に
暗
(
くら
)
く、人の
気息
(
いき
)
屋根うらに
露
(
つゆ
)
となり雨のごとくに
降
(
ふり
)
、人気
破風
(
はふ
)
よりもれて雲の立のぼるが如し。
北越雪譜:03 北越雪譜初編
(新字旧仮名)
/
鈴木牧之
、
山東京山
(著)
かくて彼は、
破風
(
はふ
)
屋根にしめっぽい風のうなっている、せせこましい故郷の町を見捨てた。少年時代の親友だった、噴水と胡桃の老木を見捨てた。それから大好きな海をも見捨てた。
トニオ・クレエゲル
(新字新仮名)
/
パウル・トーマス・マン
(著)
私は我々が通過した町々の建築法に、非常な変化があり、家の
破風
(
はふ
)
端に梁が変な具合に並べてあるのに気がついた。図455に示したものは典型的で、スイスの絵画的な建築を思わせた。
日本その日その日:03 日本その日その日
(新字新仮名)
/
エドワード・シルヴェスター・モース
(著)
よほど大きな
破風
(
はふ
)
の窓を開いて風通しをつけないと、家のなかのしめった空気が上に
滞
(
とどこお
)
って、屋根のいたみが早いだけでなく、炉の煙をじかにあてて
燻
(
いぶ
)
して、防腐をすることもできなくなる。
母の手毬歌
(新字新仮名)
/
柳田国男
(著)
見れば、並木道のはずれには、赤れんがの
破風
(
はふ
)
と
塔
(
とう
)
がそびえていて、それについている
飾
(
かざ
)
りがキラキラと
輝
(
かがや
)
いています。それは大きなお
城
(
しろ
)
です。
ニールスのふしぎな旅
(新字新仮名)
/
セルマ・ラーゲルレーヴ
(著)
その中に突立つ
破風
(
はふ
)
造りの劇場、寺の尖塔(上べは綺麗ずくめで実は罪悪ばかりの素材で作り上げたこの市に寺のあるのが彼には
一寸
(
ちょっと
)
おかしかった。)
ドーヴィル物語
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
と裾を
捌
(
さば
)
くと、何と思ったか空を望み、
破風
(
はふ
)
から出そうにきりりと手繰って、引窓をカタリと閉めた。
婦系図
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
“破風”の解説
破風(はふ)は、東アジアに広く分布する屋根の妻側の造形のことである。切妻造や入母屋造の屋根の妻側には必然的にあり、妻壁や破風板(はふいた)など妻飾りを含む。
(出典:Wikipedia)
破
常用漢字
小5
部首:⽯
10画
風
常用漢字
小2
部首:⾵
9画
“破風”で始まる語句
破風造
破風口
破風呂敷
破風作
破風家
破風板