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七章十七、十八節の「人をいかなる者としてなんじこれを大にしこれを心に留め、朝ごとにこれをそなわし時わかずこれを試み給うや」
ヨブ記講演 (新字新仮名) / 内村鑑三(著)
けれど、読者の心々に、これを人間清盛伝の一部とられるもよし、一連の障壁画を眺めるがように読むのも一つの読み方であろう。
随筆 新平家 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
こと成善しげよしが江戸でもまだ少かった蝙蝠傘かわほりがさを差して出ると、るものがの如くであった。成善は蝙蝠傘と、懐中時計とを持っていた。
渋江抽斎 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
或日一家を携えて、場末の小芝居こしばいに行く日記の一節を見ると、夜烏子の人生観とまた併せてその時代の風俗とを窺うことができる。
深川の散歩 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
伝うるところによれば、みん代の総兵戚継光せきけいこうの残して置いたもので、ここへ来た者がみだりに開いててはならないというのである。
宇都宮時雄の君とはこの人のことよと一目にて破りたれば、貴嬢きみに向かってかかる物の言いざましたもうを少しも怪しまざりき。
おとずれ (新字新仮名) / 国木田独歩(著)
が、これがもしスパイの余得であったなら同志を欺くためにもこういう不当所得のかされるような真似まねは決してなかったろう。
最後の大杉 (新字新仮名) / 内田魯庵(著)
容易に夫人の警戒がゆるみそうもないのをて取ると、河内介は懐から小さな錦の袋を取り出して、それを二三度押しいたゞきながら云った。
二三十秒の現状を維持するに、彼等がどれほどの気魄きはく消耗しょうこうせねばならぬかを思うとき、る人は始めて残酷の感を起すだろう。
思い出す事など (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
昔から、百年の精は猛犬をもってその正体をるべし、千年の精は千年の神木を焼いて、その火をもって照すべし、と言い伝えられてある。
支那の狸汁 (新字新仮名) / 佐藤垢石(著)
ればハイカラに仕立てたお島の頭髪あたまは、ぴかぴかする安宝石で輝き、指にも見なれぬ指環が光って、体にむせぶような香水のにおいがしていた。
あらくれ (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
ましてや一たび酔うて今はめているというたぐいの旅人であったならば、深い詠歎えいたんなしにはて過ぐることができなかったろう。
木綿以前の事 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
昔は煙客翁がいくら苦心をしても、この図を再びることは、鬼神きじんにくむのかと思うくらい、ことごとく失敗に終りました。
秋山図 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
彼はこの老婦人が財産を皆に分けてくれ、遺言ゆいごんまでもした後で、もう一度丈夫に成ったその手持無沙汰な様子を動作にも言葉にもて取った。
新生 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
たまへ、露西亜ロシヤ帝国政府の無道擅制ぶだうせんせいは、露西亜国民の敵ではありませんか、ども独り露西亜政府のみでは無いです、各国政府の政策といへど
火の柱 (新字旧仮名) / 木下尚江(著)
彼はてのひらを上に蠅を転がして、仔細しさいた。ああ、なんということであろう。それは本当の蠅ではなかった。薄い黒紗こくしゃで作った作り物の蠅だった。
(新字新仮名) / 海野十三(著)
然し、今彼が命を落すというとき、側にキット誰もてやった者がいなかったかも知れない。そのカムサツカでは誰だって死にきれないだろう。
蟹工船 (新字新仮名) / 小林多喜二(著)
また軍艦中騒擾そうじょうの様子をば、急に乗附き梯子を架して飛乗り、腰刀にて手詰めに夷輩を鏖殺し軍艦を奪うべし〔何ぞ蒙古襲来の役に類する〕。
吉田松陰 (新字新仮名) / 徳富蘇峰(著)
よ、ほか人一個ひとひとりらぬ畑中はたなか其所そこにわびしき天幕てんとりて、るやらずのなかる。それで叔母達をばたちるとも、叔父をぢとも此所こゝとゞまるといふ。
「僕たちがここにいて、お父さんはているからさ、兄さんがずいぶんひどくおまえを打ったからなあ……それも頭を」
山野を歩いて為事しごとをする夫の気持でやはり農業歌の一種とていい。「かりばね」は「苅れる根を言ふべし」(略解)だが、原意はよく分からぬ。
万葉秀歌 (新字新仮名) / 斎藤茂吉(著)
が、その裡のホンの少数のみが、引揚作業を、目撃もくげきし得る位置にあったが、その人達は、自分のている事を、後方へ報告する義務をおこたりはしない。
死者を嗤う (新字新仮名) / 菊池寛(著)
「あら、私は一人だわ。富岡さんは富岡さんですわ。——加野さんの御病気は、いつたい誰がていらつしやるの?」
浮雲 (新字旧仮名) / 林芙美子(著)
人のかほをぢろ/\視て「支那人が通る」は無礼に相違ないが、まづ悪口の部には入れない。が中には図星日本人ととつて、ヤポーシカが通るといふ。
露都雑記 (新字旧仮名) / 二葉亭四迷(著)
私の母の目をおとす時は、私は家内と二人で母をていたが、母の寝ている部屋の屋根のむねで、タッタ一声ひとこえ烏がカアと鳴いた。それが夜中の三時であった。
白い光と上野の鐘 (新字新仮名) / 沼田一雅(著)
敬の実用の才ありて浮文ふぶんの人にあらざるをるべし。建文のはじめに当りて、燕を憂うるの諸臣、おのおの意見を立て奏疏そうそたてまつる。中について敬の言最も実に切なり。
運命 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
庄造の言葉が終ると狸は悄然しょうぜんとして出て往った。其の夜、庄造は親切な村人達にとられて息を引きとった。それは安永あんえい七年六月二十五日のことであった。
狸と俳人 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
かえりみてれば、一国の独立は国民の独立にもといし、国民の独立はその精神の独立に根ざす(謹聴々々、拍手)。
祝東京専門学校之開校 (新字新仮名) / 小野梓(著)
しかし教員は反対にますます陰気な顔をしてこの騒ぎをていた。朝っぱらから疲れきったように、ズボンのポケットに両手をつっ張ってぽかんとしていた。
白い壁 (新字新仮名) / 本庄陸男(著)
さてそれから追々支那人流の法螺ほらを吹き出していわく、夜視るに一目は光を放ち、一目は物をる、声ゆる事雷のごとく風従って生じ百獣震え恐るとある。
彈丸だんぐわんもの見事みごとその一羽いちはたをしたが、同時どうじ鳥群てうぐんは、吾等われら敵對てきたいいろがあるとつたからたまらない。
「大池の伜がつきっきりでています。現在、築地の綜合病院でインターンをやっているんだそうで……」
肌色の月 (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
よ、従来の紀綱は全くゆるみたりしにあらずや、看よ、天下の人心は、すべての旧世界の指導者を失ひて、就いて聴くべきものをたざりしにあらずや、看よ
曰く、『われに親友あり、病重し。これをて、ために曰く、もし死して地獄に入らば、まさに来たりて相報ぜよ、と。今に至るも来たらず、知るゆえんなり』
通俗講義 霊魂不滅論 (新字新仮名) / 井上円了(著)
その死にって、パリのあらゆる新聞が筆を揃えて、偉大なる損失を悼んだのも、また、先に政府が勲章をもって功績に報いたのも、調理を芸術の一分野と
本邦にて一節抄訳せられしはけだし蘭本(アムステルダム版)によりしならん。なおパジエーの書目第四七三号及びウエンクステルンの書目三〇九頁をるべし。
語れば長いが、私は、これだけの事を、たった一瞬間にて取ってしまったのです。いや、看て取ったというよりは、むしろ感じたという方がよかったかも知れません。
死の舞踏 (新字新仮名) / 野村胡堂(著)
しかし動物の精神はかくることができぬ、動物の肉体は植物と同じく化合物と看ることもできるであろうが、精神其者は見る人の随意にこれを変ずることはできない
善の研究 (新字新仮名) / 西田幾多郎(著)
ロマン・ローランは、る人ではなくてむしろ聴く人である。直覚によって事象の内部に探り入り、その内生命の神秘を、音楽的の暗示力によって伝えんとする人である。
夫だから此の美人の顔が仮面で有るか素顔で有るか、物を云う時には破らんと、熱心に目を光らせて待って居ると、美人は少し余の様子を頓狂に思ったか笑みを浮べて
幽霊塔 (新字新仮名) / 黒岩涙香(著)
この人はなんでも十三四のころから読売新聞よみうりしんぶん寄書きしよしてたので、文章ぶんしやうを見た目でこの人をると、まるうそのやうなおもひがしました、のち巌谷いはや初対面しよたいめんの時の事を言出いひだして
硯友社の沿革 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
又其北岸城砦じやうさいの上一葉の地図を前にひらいて世界の色のす/\東方の桜光に染まり行くを諦視し、左に持ちたる『膠洲湾かうしうわん』の盃の毒酒にや酔ひけむ、顔色段々青くなり
閑天地 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
銀座でむす子の面影をどうしてこの青年の上にせてて取ったのか、不思議に思った。それももう遠い昔の出来事で、記憶の彼方に消えて行って仕舞ったように思えた。
母子叙情 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
はじまるナ! とてとった与の公、いち早くコソコソうしろへ隠れてしまったけれど、泰軒はいい気もちに高いびき、すっかり寝こんでいる——のかと思うと、さにあらず!
丹下左膳:01 乾雲坤竜の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
さては、なつかしい姉のやうにわたしの心をまもつてくれる紫のおほきいヒヤシンスよ
藍色の蟇 (新字旧仮名) / 大手拓次(著)
月の光も山のくらくなれば、今はとて戸をてて入らんとするに、八五ただる、おぼろなる八六黒影かげろひの中に人ありて、八七風のまにまにるをあやしと見れば赤穴宗右衛門なり。
里のことはあきらかに分るという、応験化道おうげんけどうきわまりなく百千年のさきまでぬくというえらいお比丘尼で、五十余歳でございますが、年齢としよりも十歳も若く見え、でっぷりして色白く
(年の寒暖によりて遅速あり)四五月にいたれば春の花ども一にひらく。されば雪中にる事およそ八ヶ月、一年のあひだ雪をざる事わづかに四ヶ月なれども、全く雪中にこもるは半年也。
さる折にもわが父は靜かに我が亂暴を守りて居給ひしのみ、彼の世の中の父親がその子の惡行を矯めんとてうち打擲するが如き事は、予の曾て我が家に見たる事なきところなり。
別に必要はないけれども、その着つけ、背恰好せかっこう、容貌、風采、就いてらるべし。……
式部小路 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)