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ふりがな文庫
“
此奴
(
こいつ
)” の例文
さて、題だが……題は何としよう?
此奴
(
こいつ
)
には昔から
附倦
(
つけあぐ
)
んだものだッけ……と思案の末、
礑
(
はた
)
と膝を
拊
(
う
)
って、平凡! 平凡に、限る。
平凡
(新字新仮名)
/
二葉亭四迷
(著)
「
此奴
(
こいつ
)
は本当の悪魔ですよ、そのくせ恐ろしく頭が良いから、私も、もう少しでやられるところだった。皆さん、これを御覧なさい」
悪魔の顔
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
かく「何も糞もあるものか、よくのめ/\と来やアがった、
手前
(
てめえ
)
が意地を附けたばっかりで忰を牢死させるようにしやアがって
此奴
(
こいつ
)
」
塩原多助一代記
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
さあ、分るだろうとは思いますが、しかし
此奴
(
こいつ
)
は一往尋ねて見てからでなけりゃあハッキリしたことは云えませんねえ。最善の方法を
痴人の愛
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
どいつも
此奴
(
こいつ
)
も癪に障ると思はないではゐられなくなる。さうして自分は一日と雖も、新聞記者を憎む事を忘れる事が出來なくなつた。
貝殻追放:002 新聞記者を憎むの記
(旧字旧仮名)
/
水上滝太郎
(著)
▼ もっと見る
「
此奴
(
こいつ
)
、
他妻
(
ひとづま
)
の寝室へ忍びこんだ姦夫……や、何ということだ、わしの友人でしかも子供のように齢の若いこの男を……淫婦
奴
(
め
)
が」
犬舎
(新字新仮名)
/
モーリス・ルヴェル
(著)
やっている。
此奴
(
こいつ
)
は骨の折れる商売だが、なかなか文化に有益な商売でね。一度俺と一緒について来ないか。面白い所を見せてやるよ。
上海
(新字新仮名)
/
横光利一
(著)
「旦那、
此奴
(
こいつ
)
あ、怪しからん奴なんです。これから皆で叩き殺してやらうと思つてる所なんです。どうか
其処
(
そこ
)
で見てゐて下さい。」
茶話:04 大正七(一九一八)年
(新字旧仮名)
/
薄田泣菫
(著)
A いよ/\
馬鹿
(
ばか
)
だなア
此奴
(
こいつ
)
は。
凡
(
およ
)
そ、
洒落
(
しやれ
)
、
皮肉
(
ひにく
)
、
諷刺
(
ふうし
)
の
類
(
るゐ
)
を
説明
(
せつめい
)
して
何
(
なん
)
になる。
刺身
(
さしみ
)
にワサビを
附
(
つ
)
けて
煮
(
に
)
て
食
(
く
)
ふ
樣
(
やう
)
なもんぢやないか。
ハガキ運動
(旧字旧仮名)
/
堺利彦
(著)
所が
此奴
(
こいつ
)
が
穢
(
きたな
)
いとも臭いとも
云
(
い
)
いようのない女で、着物はボロ/\、髪はボウ/\、その髪に
虱
(
しらみ
)
がウヤ/\して居るのが見える。
福翁自伝:02 福翁自伝
(新字新仮名)
/
福沢諭吉
(著)
お袋に兄貴、
従妹
(
いとこ
)
、と多勢一緒に
撮
(
と
)
った写真を送って来た時、新吉は、「
何奴
(
どいつ
)
も
此奴
(
こいつ
)
も
百姓面
(
ひゃくしょうづら
)
してやがらア。厭になっちまう。」
新世帯
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
「
此奴
(
こいつ
)
との流しも、いざといえば、こういう時のためと、人の勝手元から、家内の模様を見ておいたが、案外早く、役に立つ時が参った」
南国太平記
(新字新仮名)
/
直木三十五
(著)
月の光を浴びて身辺
処々
(
ところどころ
)
燦
(
さん
)
たる
照返
(
てりかえし
)
を
見
(
み
)
するのは
釦紐
(
ぼたん
)
か武具の光るのであろう。はてな、
此奴
(
こいつ
)
死骸かな。それとも
負傷者
(
ておい
)
かな?
四日間
(新字新仮名)
/
フセヴォロド・ミハイロヴィチ・ガールシン
(著)
キ……貴様はテキ屋の
竜公
(
たつこう
)
……。コ……
此奴
(
こいつ
)
は私の
借屋
(
しゃくや
)
に居やがって……家賃を溜めて……デ……出て行きやがらないんです。
芝居狂冒険
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
「
紅
(
べに
)
さ。野衾でも何でも
可
(
い
)
いやね。貢さんを可愛がるんだもの、恐くはないから行って御覧、折角、
気晴
(
きばらし
)
に
行
(
ゆ
)
くのものを、ねえ。
此奴
(
こいつ
)
が、」
照葉狂言
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
「新規に雇い入れた寿司の職人でございます。握り三年と申しましていい職人はなかなかおりませぬが、
此奴
(
こいつ
)
はなかなか使えそうで。——」
つづれ烏羽玉
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
「君、
馴育
(
じゅんいく
)
掛りのお嬢さんへようくいわなきァ駄目だぜ。鍵を忘れたもんだから勝手にでちまって、それに、
此奴
(
こいつ
)
までがえらく
亢奮
(
こうふん
)
している」
人外魔境:01 有尾人
(新字新仮名)
/
小栗虫太郎
(著)
いゝや。娘さんですか。いゝや。後家様。いゝや。お婆さんですか。馬鹿を云へ可愛想に。では赤ん坊。
此奴
(
こいつ
)
め人をからかふな、ハヽハヽヽ。
五重塔
(新字旧仮名)
/
幸田露伴
(著)
「
此奴
(
こいつ
)
、とぼけた
面
(
つら
)
をしているが、幕吏の廻し者か、幕府の誰かに、頼まれたに相違ない。さもなくば、この武市に、吹矢を射るはずはない」
松のや露八
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
此奴
(
こいつ
)
が最後に地軸もろとも引裂くような爆発音を起すのだから、ただ一本の棒にこもった充実した凄味といったら論外で
白痴
(新字新仮名)
/
坂口安吾
(著)
「
叱
(
しっ
)
! お静かに」そしてユアンの右腕が挙がった。
此奴
(
こいつ
)
め!
拳銃
(
ピストル
)
を突きつける気だな! と私は直感したのであった。
陰獣トリステサ
(新字新仮名)
/
橘外男
(著)
その赤樫と云ふ奴は貸金の督促を利用しては女を
弄
(
もてあそ
)
ぶのが道楽で、
此奴
(
こいつ
)
の為に
汚
(
けが
)
された者は随分意外の
辺
(
へん
)
にも在るさうな。
金色夜叉
(新字旧仮名)
/
尾崎紅葉
(著)
毎日
斯
(
か
)
うして二人で働いてゐたが、時々飛入りに手伝に来る職人があつた。
此奴
(
こいつ
)
が手伝に来ると、
屹度
(
きつと
)
娘を叱り飛ばす、
而
(
さう
)
してミハイロに
調戯
(
からか
)
ふ。
椋のミハイロ
(新字旧仮名)
/
ボレスワフ・プルス
(著)
なぜって?……友人だったあのディーネルの
奴
(
やつ
)
でさえ、ああいう待遇をしたところを見ると、昔さんざんいじめられて憎んでるに違いない
此奴
(
こいつ
)
から
ジャン・クリストフ:07 第五巻 広場の市
(新字新仮名)
/
ロマン・ロラン
(著)
「
此間
(
こないだ
)
社に来て、
昨夜
(
ゆうべ
)
耽溺をして来た、と言っていたと聞いたから、はあ
此奴
(
こいつ
)
は屹度桜木に行ったなと思ったから、直ぐ行って聞いて見てやった。」
別れたる妻に送る手紙
(新字新仮名)
/
近松秋江
(著)
「
此奴
(
こいつ
)
、
乗打
(
のりう
)
ちをしたナ、覚えてろ!」と紅葉は手を振上げて打つ
擬
(
まね
)
をするとヨタヨタ
俥
(
ぐるま
)
がいよいよヨタヨタした。
硯友社の勃興と道程:――尾崎紅葉――
(新字新仮名)
/
内田魯庵
(著)
さうかと思ふと、代助の口調が如何にも平気で、冷静で、はにかまず、もぢ
付
(
つ
)
かず尋常極まつてゐるので、
此奴
(
こいつ
)
は手の付け様がないといふ気にもなる。
それから
(新字旧仮名)
/
夏目漱石
(著)
「何をいってやァがるとは思ったけれど、でもない、また、大きにそうかも知れねえ。ことによったら、
此奴
(
こいつ
)
……」
春泥
(新字新仮名)
/
久保田万太郎
(著)
いったい、
此奴
(
こいつ
)
ら、人間であるか、ただしは山の
貉
(
むじな
)
であろうか。それは知らぬ。ただ踊る姿は人間の女で、笊は手振は足取りは鰌すくいにちがいない。
フレップ・トリップ
(新字新仮名)
/
北原白秋
(著)
しかし安達君の説によると、吉川君の人相が強盗の一人に一番好く似ていた証拠に、吉川君が一番厳しく調べられたから、
此奴
(
こいつ
)
も責任があるというのです
求婚三銃士
(新字新仮名)
/
佐々木邦
(著)
此奴
(
こいつ
)
のために、私の休養の形は安静、床に休むことになって来る。おなかの右下四分の一にだけ邪魔ものがいる。きのうきょう、これがバッコしているのです。
獄中への手紙:04 一九三七年(昭和十二年)
(新字新仮名)
/
宮本百合子
(著)
端艇
(
たんてい
)
を
覆
(
くつが
)
へす
懼
(
おそれ
)
があるので
今
(
いま
)
しも
右舷
(
うげん
)
間近
(
まぢか
)
に
泳
(
およ
)
いで
來
(
き
)
た三四
尺
(
しやく
)
の
沙魚
(
ふか
)
、『
此奴
(
こいつ
)
を。』と
投込
(
なげこ
)
む
餌
(
え
)
の
浪
(
なみ
)
に
沈
(
しづ
)
むか
沈
(
しづ
)
まぬに、
私
(
わたくし
)
は『やツ。しまつた。』と
絶叫
(
ぜつけう
)
したよ。
海島冒険奇譚 海底軍艦:05 海島冒険奇譚 海底軍艦
(旧字旧仮名)
/
押川春浪
(著)
あのとき
此奴
(
こいつ
)
は、兄さんに
苦
(
くるし
)
められたのです。兄さんは
護身用
(
ごしんよう
)
に、
携帯感電器
(
けいたいかんでんき
)
をもっていらっしゃる。
崩れる鬼影
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
約束の時間が迫って来るにつれて、さすがに胸が波うつように思われ、客の男女が出入りする
度
(
たび
)
に
若
(
も
)
しや
此奴
(
こいつ
)
ではないかと拳を握った。——一杯の
珈琲
(
コーヒー
)
も
残少
(
のこりすくな
)
くなった。
劇団「笑う妖魔」
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
有喜子には支那人の情人があるという噂を聞いていましたので、咄嗟に
此奴
(
こいつ
)
だなと思いました。
機密の魅惑
(新字新仮名)
/
大倉燁子
(著)
向河岸の楊柳の間に、
何時
(
いつ
)
の間にやら
以前
(
もと
)
の悪僧が再現して手に
鰻裂
(
うなぎさき
)
の小庖丁を持っていた。
此方
(
こちら
)
を睨んだ眼の凄さと云ったら無かった。
此奴
(
こいつ
)
が正しく藤蔓を断ったのだ。
死剣と生縄
(新字新仮名)
/
江見水蔭
(著)
その
柔
(
やわら
)
かい筋肉とは無関係に、
角化質
(
かくかしつ
)
の堅い
爪
(
つめ
)
が短かく
尖
(
さき
)
の丸い
稚
(
おさ
)
ない指を
屈伏
(
くっぷく
)
させるように
確乎
(
かっこ
)
と並んでいる。
此奴
(
こいつ
)
の
強情
(
ごうじょう
)
!と、逸作はその爪を眼で
圧
(
おさ
)
えながら言った。
かの女の朝
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
此奴
(
こいつ
)
怪しいと思つたから、何を
為
(
し
)
てるんだ! と
態
(
わざ
)
と
大
(
でか
)
い声を
懸
(
か
)
けて遣つた。すると、猫のやうな眼で、ぎよろツと僕を見て、そしてがさ/\と奥の方に身を隠して了つた。
重右衛門の最後
(新字旧仮名)
/
田山花袋
(著)
酒亭
(
さかや
)
へ
入
(
はひ
)
った
當座
(
たうざ
)
には、
劍
(
けん
)
を
食卓
(
テーブル
)
の
下
(
した
)
へ
叩
(
たゝ
)
きつけて「
神
(
かみ
)
よ、
願
(
ねが
)
はくは
此奴
(
こいつ
)
に
必要
(
ひつえう
)
あらしめたまふな」なぞといってゐながら、
忽
(
たちま
)
ち二
杯目
(
はいめ
)
の
酒
(
さけ
)
が
利
(
き
)
いて、
何
(
なん
)
の
必要
(
ひつえう
)
も
無
(
な
)
いのに
ロミオとヂュリエット:03 ロミオとヂュリエット
(旧字旧仮名)
/
ウィリアム・シェークスピア
(著)
だが
此奴
(
こいつ
)
はもう空気も水もない死んだ世界なんだから仕様がない、それよりか我々が例えばロケットか何かで地球を飛出したとすれば、まず火星に行くより仕方がないだろうね
火星の魔術師
(新字新仮名)
/
蘭郁二郎
(著)
栄二 兄さん、
此奴
(
こいつ
)
、泥棒なんだ。あすこから入って来て、櫛とろうとしたんだ。僕がお母さんに上げる櫛持っていこうとしたんだ。お
巡
(
まわ
)
りさん呼んで、警察にわたしてやるんだ。
女の一生
(新字新仮名)
/
森本薫
(著)
確かに
蝦
(
えび
)
や
蟹
(
かに
)
と同じく甲殻類に属するが、蝦や蟹が活溌に運動して
餌
(
えさ
)
を探し廻る中に交って、
此奴
(
こいつ
)
だけは岩などに固着して、一生涯働くこともなく、餌の口に
這入
(
はい
)
るのを待っている。
進化論より見たる沖縄の廃藩置県
(新字新仮名)
/
伊波普猷
(著)
「やあ、
此奴
(
こいつ
)
とう/\入りやがつたな。」川上は幾分驚嘆の気味で彼に云つた。
虎
(新字旧仮名)
/
久米正雄
(著)
甲田は、
社
(
やしろ
)
に泊るといふことに好奇心を動かした。然しそれよりも、金さへ呉れゝば
此奴
(
こいつ
)
が帰ると思ふと、うれしいやうな気がした。そして職員室に行つてみると、福富はまだ帰らずにゐた。
葉書
(新字旧仮名)
/
石川啄木
(著)
以て出で來れば重四郎は見て其所へ
來
(
く
)
るのは彌十か是は重四郎樣と云ふ時
手招
(
てまね
)
ぎして畔倉
聲
(
こゑ
)
を
密
(
ひそ
)
めコレ彌十今手に掛けし此奴等は
皆
(
みな
)
宿無
(
やどな
)
しなれど
此死骸
(
このしがい
)
が有ては兎角後が
面倒
(
めんだう
)
なり何と
此奴
(
こいつ
)
等を
大岡政談
(旧字旧仮名)
/
作者不詳
(著)
今わつしの所にゐる一番弟子の徳てえのは来年兵隊検査でごわすが
此奴
(
こいつ
)
は素晴らしい腕になりやした。仕上げだらうと旋盤だらうと、火作りだらうと、何をやらしても人以上のことをやりやす。
煤煙の匂ひ
(新字旧仮名)
/
宮地嘉六
(著)
成らざるを得ないじゃァありませんか。だが
此奴
(
こいつ
)
も見ようによっては、『深い愛情』にも見えますなあ。で、奥さんは(何が奥さんだ!)そういう見方をしましたんで。つまり好意ある見方をね。
奥さんの家出
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
尤
(
もっと
)
も、こう物騒な野郎ばかりが、つながって歩けねえのは、
道理
(
ことわり
)
なのだから、お前さんが、
此奴
(
こいつ
)
だと思う野郎を、名指しておくんなせえ。何も親分乾児の間で、遠慮することなんかありゃしねえ。
入れ札
(新字新仮名)
/
菊池寛
(著)
桂川
(
かつらがは
)
の
幕
(
まく
)
が
出
(
で
)
る
時
(
とき
)
はお
半
(
はん
)
の
脊
(
せな
)
に
長右衞門
(
ちやううゑもん
)
と
唱
(
うた
)
はせて
彼
(
あ
)
の
帶
(
おび
)
の
上
(
うへ
)
へちよこなんと
乘
(
の
)
つて
出
(
で
)
るか、
此奴
(
こいつ
)
は
好
(
い
)
いお
茶番
(
ちやばん
)
だと
笑
(
わら
)
はれるに、
男
(
をとこ
)
なら
眞似
(
まね
)
て
見
(
み
)
ろ、
仕事
(
しごと
)
やの
家
(
うち
)
へ
行
(
い
)
つて
茶棚
(
ちやだな
)
の
奧
(
おく
)
の
菓子鉢
(
くわしばち
)
の
中
(
なか
)
に
わかれ道
(旧字旧仮名)
/
樋口一葉
(著)
またこんな人間もいるだろう。
其奴
(
そいつ
)
はきょうあたり大丈夫で、
息張
(
いば
)
って歩いている。ところが詰まらない、偶然の出来事で、
此奴
(
こいつ
)
は一二週間の内に死んでしまうのだ。そのくせ死という事なんぞを
みれん
(新字新仮名)
/
アルツール・シュニッツレル
(著)
此
漢検準1級
部首:⽌
6画
奴
常用漢字
中学
部首:⼥
5画
“此奴”で始まる語句
此奴等