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もはや
ふりがな文庫
“
最早
(
もはや
)” の例文
むしろ努めた感じで之丈けの事を云つたモニカの調子は、
最早
(
もはや
)
心に思ふ半分も云ひ現はし得ぬ、羞ぢらい深い娘の口調ではなかつた。
青銅の基督:――一名南蛮鋳物師の死
(新字旧仮名)
/
長与善郎
(著)
むろん
此等
(
これら
)
の人達は、すでに地上とはきれいに絶縁して
了
(
しま
)
い、彼等の墓石の上に、哀悼の涙を
濺
(
そそ
)
ぐものなどは、
最早
(
もはや
)
只
(
ただ
)
の一人もない。
霊訓
(新字新仮名)
/
ウィリアム・ステイントン・モーゼス
(著)
仲介者はカイアヹエ君に手紙を送り「貴下が不名誉なりとせらるる所は我等の
最早
(
もはや
)
立入るべからざる所に
候
(
そろ
)
」と云つて
其
(
その
)
任を辞した。
巴里より
(新字旧仮名)
/
与謝野寛
、
与謝野晶子
(著)
最早
(
もはや
)
、最後かと思う時に、鎮守の
社
(
やしろ
)
が目の前にあることに心着いたのであります。同時に峰の
尖
(
とが
)
ったような
真白
(
まっしろ
)
な杉の大木を見ました。
雪霊続記
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
そしてやがて「最後の
檉柳
(
タマリスク
)
の
残骸
(
ざんがい
)
が塩野原に
横
(
よこた
)
わるのを後にすると、
最早
(
もはや
)
死の世界ではない。全然生を知らぬ世界」となって来た。
『西遊記』の夢
(新字新仮名)
/
中谷宇吉郎
(著)
▼ もっと見る
たとい、これを彼等「江戸ッ子」が息を吹き返しつつある一時の現象と見ても、
最早
(
もはや
)
非常な立ち
後
(
おく
)
れになっていることはたしかである。
街頭から見た新東京の裏面
(新字新仮名)
/
夢野久作
、
杉山萠円
(著)
そしてアレヨアレヨと云う
裡
(
うち
)
に、視界の外に出てしまった。
駭
(
おどろ
)
いてテレヴィジョン装置のレンズを向け直したが、
最早
(
もはや
)
駄目だった。
赤外線男
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
そこへ
來
(
く
)
ると
最早
(
もはや
)
寒帶林
(
かんたいりん
)
の
終
(
をは
)
りに
近
(
ちか
)
づいたことがわかります。すなはち
落葉松林
(
からまつばやし
)
の
幅
(
はゞ
)
はごく
狹
(
せま
)
くなつてをり、
木
(
き
)
も
小
(
ちひ
)
さくなつてゐます。
森林と樹木と動物
(旧字旧仮名)
/
本多静六
(著)
あゝ、
海賊船
(
かいぞくせん
)
か、
海賊船
(
かいぞくせん
)
か、
若
(
も
)
しもあの
船
(
ふね
)
が
世界
(
せかい
)
に
名高
(
なだか
)
き
印度洋
(
インドやう
)
の
海賊船
(
かいぞくせん
)
ならば、
其
(
その
)
船
(
ふね
)
に
睨
(
にら
)
まれたる
我
(
わが
)
弦月丸
(
げんげつまる
)
の
運命
(
うんめい
)
は
最早
(
もはや
)
是迄
(
これまで
)
である。
海島冒険奇譚 海底軍艦:05 海島冒険奇譚 海底軍艦
(旧字旧仮名)
/
押川春浪
(著)
取出し見れば
最早
(
もはや
)
顏
(
かほ
)
に
劔難
(
けんなん
)
の
相
(
さう
)
顯
(
あらは
)
れたれば然ば明日は病氣と
僞
(
いつは
)
り供を除き
捕手
(
とりて
)
の向はぬ内に
切腹
(
せつぷく
)
すべしと
覺悟
(
かくご
)
を極め大膳の
許
(
もと
)
へ
使
(
つかひ
)
を
大岡政談
(旧字旧仮名)
/
作者不詳
(著)
さるにても人の妻となりてより幾年をか
經給
(
へたま
)
ひし。女主人。
最早
(
もはや
)
十とせあまりになりぬ。かしこなる娘たちに問ひ試み給へかしといふ。
即興詩人
(旧字旧仮名)
/
ハンス・クリスチャン・アンデルセン
(著)
これはいけない。これは
最早
(
もはや
)
扶
(
たす
)
からない。しかし、
今日
(
こんにち
)
までの経過は、こう
迅
(
はや
)
く迫って来べきでないが、何か、どうかしたのではないか。
幕末維新懐古談:28 東雲師逝去のこと
(新字新仮名)
/
高村光雲
(著)
勝手な自分の生活を持っている夫に対しては、
最早
(
もはや
)
、自分だけがその責任を負っていなければならない筈が無いと思ったからだ。
接吻を盗む女の話
(新字新仮名)
/
佐左木俊郎
(著)
最早
(
もはや
)
一分も
猶予
(
ゆうよ
)
が出来ぬ
仕儀
(
しぎ
)
となったから、やむをえず失敬して両足を前へ存分のして、首を低く押し出してあーあと
大
(
だい
)
なる欠伸をした。
吾輩は猫である
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
最早
(
もはや
)
、
茜
(
あかね
)
さえ
褪
(
あ
)
せた空に、いつしか
I岬
(
アイみさき
)
も溶け込み、サンマー・ハウスの
灯
(
ひ
)
を写すように、澄んだ夜空には、淡く銀河の瀬がかかる——。
鱗粉
(新字新仮名)
/
蘭郁二郎
(著)
それが緒についてから
日暮里
(
にっぽり
)
に間借をして家を持ち、間もなく神田五軒町に一戸を構えて父となった。余は
最早
(
もはや
)
放浪の児ではなくなった。
子規居士と余
(新字新仮名)
/
高浜虚子
(著)
お前はクリスチャンか、とある人に聞かれたら捨吉は
最早
(
もはや
)
以前に浅見先生の教会で洗礼を受けた時分の同じ自分だとは答えられなかった。
桜の実の熟する時
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
これは
夜
(
よ
)
の
明
(
あ
)
けぬ
間
(
ま
)
に
河内
(
かはち
)
へ越さうとして、身も心も疲れ果て、
最早
(
もはや
)
一歩も進むことの出来なくなつた平八郎
父子
(
ふし
)
と瀬田、渡辺とである。
大塩平八郎
(新字旧仮名)
/
森鴎外
(著)
桜町
(
さくらまち
)
の
殿
(
との
)
は
最早
(
もはや
)
寝処
(
しんじよ
)
に
入
(
い
)
り給ひし
頃
(
ころ
)
か。さらずは
燈火
(
ともしび
)
のもとに書物をや
開
(
ひら
)
き給ふ。
然
(
さ
)
らずは机の上に紙を
展
(
の
)
べて、静かに筆をや動かし給ふ。
軒もる月
(新字旧仮名)
/
樋口一葉
(著)
さて始めのほどは泊港に関する一切の事務は安里
掟
(
うっち
)
に一任しておいたが、
最早
(
もはや
)
間に合わなくなったのである。『
中山世譜
(
ちゅうざんせいふ
)
』〔『球陽』〕に
浦添考
(新字新仮名)
/
伊波普猷
(著)
変って居るのは
唯々
(
ただ
)
何時
(
いつ
)
もの通り夜になると不動様を拝むことだけで、
僕等
(
ぼくら
)
もこれは
最早
(
もはや
)
見慣れて居るから
強
(
しい
)
て気にもかゝりませんでした。
運命論者
(新字新仮名)
/
国木田独歩
(著)
そういう文壇というものが、作家生活と文学を生新にする力を欠いていることを疑うものは
最早
(
もはや
)
一人もないであろうと思う。
文学の大衆化論について
(新字新仮名)
/
宮本百合子
(著)
愈々
(
いよいよ
)
苗場登山の目的で友人の松本君と法師温泉に着いたのは六月の初めであった。雪は
最早
(
もはや
)
消えて新緑の世界となっていた。
三国山と苗場山
(新字新仮名)
/
木暮理太郎
(著)
と一々講釈の長きに時間かかりて食事は容易に済みそうもなし。大原は御馳走に気を奪われて
最早
(
もはや
)
七時を過ぎしをも知らず。
食道楽:秋の巻
(新字新仮名)
/
村井弦斎
(著)
素性
(
すじょう
)
を
看破
(
みやぶ
)
られ、数日に
亙
(
わた
)
る執拗な追跡に、
最早
(
もはや
)
逃亡の気力も失せたので、博士に手柄を立てさせるよりは、自ら一命を絶つ決心をしたのだ。
悪魔の紋章
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
従ってそのいい難い一週間が終わって、
最早
(
もはや
)
それ以上とどまることの不可能になった時、氏がどんなにその別れをはかないものに思ったことか!
地図にない街
(新字新仮名)
/
橋本五郎
(著)
然るに修理亮等は
最早
(
もはや
)
救援の軍も近いであろうと云うので、忽ち鉄砲をもって挑戦した。盛政怒って攻め立て
矢叫
(
やたけ
)
びの声は余呉の湖に反響した。
賤ヶ岳合戦
(新字新仮名)
/
菊池寛
(著)
右
(
みぎ
)
の
通
(
とほ
)
り、
津浪
(
つなみ
)
は
事實上
(
じじつじよう
)
に
於
(
おい
)
て
港
(
みなと
)
の
波
(
なみ
)
である。われ/\は
學術的
(
がくじゆつてき
)
にもこの
名前
(
なまへ
)
を
用
(
もち
)
ひてゐる。
實
(
じつ
)
に
津浪
(
つなみ
)
なる
語
(
ご
)
は、
最早
(
もはや
)
國際語
(
こくさいご
)
となつた
觀
(
かん
)
がある。
地震の話
(旧字旧仮名)
/
今村明恒
(著)
ここまで進んで来ると、東京附近や信州などのツクシンボが、二つの方言の複合であることは、
最早
(
もはや
)
討論を要せぬと思う。
野草雑記・野鳥雑記:01 野草雑記
(新字新仮名)
/
柳田国男
(著)
最早
(
もはや
)
海王星を見付けねばならぬ程度にまで進んでおったから、二星学者をして各々独立して同時に同一の推測をなし、同一の発見をなさしめて
法窓夜話:02 法窓夜話
(新字新仮名)
/
穂積陳重
(著)
既
(
すで
)
に水も
艸木
(
くさき
)
も、虫も土も空も太陽も、皆我々蛙の為にある。
森羅万象
(
しんらばんしやう
)
が
悉
(
ことごと
)
く我々の為にあると云ふ事実は、
最早
(
もはや
)
何等
(
なんら
)
の
疑
(
うたがひ
)
をも
容
(
い
)
れる余地がない。
蛙
(新字旧仮名)
/
芥川竜之介
(著)
また葬式
一切
(
いっさい
)
の費用に関しても、
最早
(
もはや
)
自分の衣類道具も片なくなっている
際
(
さい
)
でもあるし、
如何
(
どん
)
な事をするかも知れない
二面の箏
(新字新仮名)
/
鈴木鼓村
(著)
『お
城
(
しろ
)
もとうとう
落
(
お
)
ちてしまった……
最早
(
もはや
)
良人
(
おっと
)
もこの
世
(
よ
)
の
人
(
ひと
)
ではない……
憎
(
にく
)
ッくき
敵
(
てき
)
……
女
(
おんな
)
ながらもこの
怨
(
うら
)
みは……。』
小桜姫物語:03 小桜姫物語
(新字新仮名)
/
浅野和三郎
(著)
ムヽー、
彼
(
あれ
)
だけの
手当
(
てあて
)
に
及
(
およ
)
んでも息が出んと
申
(
まう
)
せば
最早
(
もはや
)
全
(
まつた
)
く
命数
(
めいすう
)
が
尽
(
つ
)
きたのかも知れぬて、
何
(
ど
)
うしても
気
(
き
)
が
附
(
つ
)
かぬか。
華族のお医者
(新字旧仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
太古の人種と同じ様に一種
畏怖
(
いふ
)
の意味を持った宗教心が起こって来た。かかる宗教心は
最早
(
もはや
)
数知れぬ長い時代の間、全く人心に忘れられていたのだ。
暗黒星
(新字新仮名)
/
シモン・ニューコム
(著)
大きな誘拐者、大きな山師、かうした批評は、世間の一面にはまだ依然として残つてゐるけれども、信者はそんなことには
最早
(
もはや
)
頓着してゐなかつた。
ある僧の奇蹟
(新字旧仮名)
/
田山花袋
(著)
針を運ぶとか云うことは
最早
(
もはや
)
問題でなく、専ら四隅の蔭を消すことに費されるようになったが、その考は少くとも日本家屋の美の観念とは両立しない。
陰翳礼讃
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
浮世絵は
最早
(
もはや
)
吹きぼかしと
雲母摺
(
きらずり
)
の二術を後世の画工に
托
(
たく
)
せしのみにして、その佳美なる制作品は世人をして
汎
(
あまね
)
く吾妻錦絵と呼ばしむるに至れるなり。
江戸芸術論
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
彼と妻との間には
最早
(
もはや
)
悲しみの
時機
(
じき
)
は過ぎていた。彼は今まで医者から妻の死の宣告を幾度聞かされたか分らなかった。その度に彼は医者を変えてみた。
花園の思想
(新字新仮名)
/
横光利一
(著)
此処には
最早
(
もはや
)
旅愁をそゝのかされるやうな物売の呼声を聞くことができぬ、意外に空気は
急忙
(
あはた
)
だしいが厳粛なものであつた、私は押し流されるやうにして
新橋
(新字旧仮名)
/
北原白秋
(著)
何となればわれら国歌を研究せんとして歌集を
繙
(
ひもと
)
きしことしばしばなるも、
何時
(
いつ
)
も四、五枚位読みては
最早
(
もはや
)
眠気さして読み得ぬまでに彼らはつまらぬなり。
人々に答ふ
(新字旧仮名)
/
正岡子規
(著)
彼人
(
かのひと
)
御安きことなり、早速下田なる母の元に申し
遣
(
つか
)
わすべし、
最早
(
もはや
)
旅人宿も廃業し父も早く死したれは、果して存在しおるや否や受合い申さずと語られ候。
吉田松陰
(新字新仮名)
/
徳富蘇峰
(著)
小説界には
最早
(
もはや
)
二三世紀とも言ふべき程の変遷あり、批評界も
能
(
よ
)
く変じ能く動きたるに、劇詩のみは依然として狂言作者の手に残り、
如何
(
いかん
)
ともすべき様なし。
劇詩の前途如何
(新字旧仮名)
/
北村透谷
(著)
しかも、業
未
(
いま
)
だ成らざるに、この運命に立至った。曾て作るところの詩数百
篇
(
ぺん
)
、
固
(
もと
)
より、まだ世に行われておらぬ。遺稿の所在も
最早
(
もはや
)
判らなくなっていよう。
山月記
(新字新仮名)
/
中島敦
(著)
陸軍を志願したのも、幼時は
左
(
と
)
に
右
(
か
)
くその頃では
最早
(
もはや
)
ただ軍服が着たいというような幼い希望ではなかった。
二葉亭四迷の一生
(新字新仮名)
/
内田魯庵
(著)
君は
最早
(
もはや
)
、僕に心臓を提供した女が何人であるかを推知して居るであろう。僕は今無限の喜びを感じて居る。
恋愛曲線
(新字新仮名)
/
小酒井不木
(著)
間の堕落は間その人の死んだも同然、貴方は夫を持つて六年、なあ、水は
覆
(
くつがへ
)
つた。盆は破れて
了
(
しま
)
うたんじや。かう成つた上は
最早
(
もはや
)
神の力も
逮
(
およ
)
ぶことではない。
金色夜叉
(新字旧仮名)
/
尾崎紅葉
(著)
上官。私は決心いたしました。この饑餓陣営の中に
於
(
お
)
きましては
最早
(
もはや
)
私共の運命は
定
(
さだ
)
まってあります。戦争の
為
(
ため
)
にでなく飢餓の為に
全滅
(
ぜんめつ
)
するばかりであります。
饑餓陣営:一幕
(新字新仮名)
/
宮沢賢治
(著)
最早
(
もはや
)
隱し立ても無用と存じ、私の口から萬事を申上げます。元柳橋の娘の家までお出でを願上げます。豊年
銭形平次捕物控:310 闇に飛ぶ箭
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
金多く持てるを主人が見て悪党を催し、鶏が止まる竹に湯を通し、夜中に鳴かせて、
最早
(
もはや
)
暁近いと欺き、尼を出立させ、途中に待ち伏せて殺し、その金を奪うた。
十二支考:08 鶏に関する伝説
(新字新仮名)
/
南方熊楠
(著)
“最早”の意味
《名詞》
時期・時刻が一番早い。
(出典:Wiktionary)
最
常用漢字
小4
部首:⽈
12画
早
常用漢字
小1
部首:⽇
6画
“最早”で始まる語句
最早直
最早々々