平日へいじつ)” の例文
大通りの町々と云っても、平日へいじつは寂しいもので——その当時は相当に賑やかいと思っていたのであるが——人通りもまた少なかった。
綺堂むかし語り (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
此地方このちほう砂丘さきゆう地震ぢしんならずとも崩壞ほうかいすることがあるのだから、地震ぢしんさいして注意ちゆういすべきは當然とうぜんであるけれども、平日へいじつおいてもをつけ
地震の話 (旧字旧仮名) / 今村明恒(著)
つぎ週間しうかんには、小六ころくず、佐伯さへきからの音信たよりもなく、宗助そうすけ家庭かていまた平日へいじつ無事ぶじかへつた。夫婦ふうふ毎朝まいあさつゆひかころきて、うつくしいひさしうへた。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
平日へいじつ何等なんら慰藉ゐしやあたへらるゝ機會きくわいをもいうしてないで、しかきたがり、りたがり、はなしたがる彼等かれらは三にんとさへあつまれば膨脹ばうちやうした瓦斯ガスふくろ破綻はたんもとめてごと
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
三先生の食事中の対話も、いつもとたいして変わりはなかった。すべては平日へいじつどおりだった。
次郎物語:05 第五部 (新字新仮名) / 下村湖人(著)
勤むる大橋文右衞門と云者いふもの平日へいじつ懇意こんいに致し仁心じんしんも深き人ゆゑ其事を不便に思ひ太守たいしゆより御沙汰のなきうちにとひそかに新藤を招き金子二十兩をあたへ早々御家を立退たちのき江戸表へ出て奉公を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
おそおほしと慇懃いんぎんなり、このほどはお不快ふくわいうけたまはりしが、最早もはや平日へいじつかへらせたまひしか、お年輩としごろには氣欝きうつやまひのるものとく、れい讀書どくしよはなはだわろし、大事だいじ御身おんみ等閑なほざりにおぼしめすなと
たま襻 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
地震ぢしん出會であつた一瞬間いつしゆんかんこゝろ落着おちつきうしなつて狼狽ろうばいもすれば、いたづらにまど一方いつぽうのみにはしるものもある。平日へいじつ心得こゝろえりないひとにこれがおほい。
地震の話 (旧字旧仮名) / 今村明恒(著)
二回目に先生を訪問したのは四月の末で、その日は平日へいじつであったので通学中の多代子さんは見えなかった。先生のお嬢さんも病気が全快して一緒に学校へ出て行ったとの事であった。
深見夫人の死 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
翌日よくじつ宗助そうすけれいごときて、平日へいじつかはことなく食事しよくじました。さうして給仕きふじをしてれる御米およねかほに、多少たせう安心あんしんいろえたのを、うれしいやうあはれなやう一種いつしゆ情緒じやうしよもつながめた。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
地震ぢしんたいして其安全そのあんぜんさをあやぶんでゐる識者しきしやおほことであるが、これは其局そのきよくあたるものゝ平日へいじつ注意ちゆういすべきことであつて、小國民しようこくみん關與かんよすべきことでもあるまい。
地震の話 (旧字旧仮名) / 今村明恒(著)