姉様あねさま)” の例文
旧字:姉樣
離すと、いことに、あたり近所の、我朝わがちょう姉様あねさま仰向あおむけ抱込だきこんで、ひっくりかへりさうであぶないから、不気味らしくも手からは落さず……
印度更紗 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
彼は優しい姉様あねさまだと思つた。その詞について少しゐざつて、二尺程膝をすゝめた。それでも折り曲げた足の先が閾にさはるほどの端近である。
夜烏 (新字旧仮名) / 平出修(著)
甲州の北巨摩きたこま郡ではオワザッコというのが、姉様あねさまごとの方言だと郡誌ぐんしにはあるが、東国ではワザットはもと物を配るときの辞令の語であった。
こども風土記 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
毎年正月の八日には馬籠仲町にある檀家だんか姉様あねさまたちが仏参を兼ねての年玉に来る、その時寺では十人あまりへ胡桃餅くるみもちを出す、早朝から風呂ふろ
夜明け前:04 第二部下 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
姉様あねさま昨夜ゆうべのう種々いろ/\お話をしたが、屋敷に長くいる訳にもいかんから、此の通り諸道具を引払ってしまった、しかし又再び帰る時節もあろうからと思い
菊模様皿山奇談 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
言葉の調子だってその通り、茂太郎に対して親切な姉様あねさまぶりといったような気位が、少しも乱れてはおりません。
大菩薩峠:25 みちりやの巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
おなどしの私の児供は魔子を不便がったと見えて、大切だいじにしていた姉様あねさまや千代紙を残らず魔子にってしまった。
最後の大杉 (新字新仮名) / 内田魯庵(著)
友達がおかみさんを呼んで、一杯いただきたいが、おそくて迷惑なら壜詰びんづめを下さいと言うと、おかみさんは姉様あねさまかぶりにした手拭を取りながら、おあがんなさいまし。
雪の日 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
かえで それじゃと言うて不意のいくさに、姉様あねさまはなんとなさりょうか。もし逃げ惑うて過失あやまちでも……。
修禅寺物語 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
姉様あねさまこれほどの御病気、殊更ことさら御幼少おちいさいのもあるを他人任せにして置きまして祇園ぎおん清水きよみず金銀閣見たりとて何の面白かるべき、わたしこれより御傍おそばさらず御看病致しましょとえば七蔵つらふくらかし
風流仏 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
幅のせばい帯を締めて姉様あねさまを荷厄介やっかいにしていたなれど、こましゃくれた心から、「あの人はお前の御亭主さんにもらッたのだヨ」ト坐興に言ッた言葉の露をまことくんだか、初の内ははにかんでばかりいたが
浮雲 (新字新仮名) / 二葉亭四迷(著)
「内藤君、お姉様あねさまのおへやへ遊びにいってみよう」
苦心の学友 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
お茶場に、おつかさま、下座したざ姉様あねさまが、何れも説教者の方へ顔を向けて一心にお使僧の説教に聞入つて居た。村の人は二十四五人も集まつて居た。
夜烏 (新字旧仮名) / 平出修(著)
「それはハヤ不念ぶねんなこんだ。帯の結めさえ叩いときゃ、何がそれで姉様あねさまなり、母様おふくろさまなりの魂が入るもんだでエテめはどうすることもしえないでごす。」
竜潭譚 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
是方こちらでも子供衆が出来さっせえて、御新造さんも手が有らっせまいで、寄るだけは寄れ、御厄介には成るな——こう姉様あねさまから言付かって来ました」
家:01 (上) (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
憫然かわいそうに其の剣術遣えが、此の人の姉様あねさまをひどくぶっ切って逃げたとよ、だから口惜しくってなんねえ、子心にも兄さんやあねさんの敵がちてえッて心易い相撲取が有るんだ…風車か…え…花車
真景累ヶ淵 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
椿岳の浅草人形というは向島むこうじま隠棲いんせいしてから後、第二博覧会の時、工芸館へ出品した伏見焼のような姉様あねさまや七福神の泥人形であって、一個二十五銭の札を附けた数十個が一つ残らず売れてしまった。
姉様あねさまはすなわち長男の新婦、上とは屋根裏のことであるが、二階にをかき天井板を張ることは、古くからのことではないから、そこを姉様のつね居処いどころと見たことは、新たな趣向だったかと思われる。
海上の道 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
……顔馴染かおなじみの濃いくれない薄紫うすむらさき、雪のはだえ姉様あねさまたちが、この暗夜やみのよを、すっとかどを出る、……とと寂しくなった。
国貞えがく (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
一寸ちょっと町まで行きました、姉様あねさまも一緒に。今小僧を迎えに遣りましたで、直ぐ帰って参りましょう」
家:02 (下) (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
一番近くに居た姉様あねさまは、しうとめの心を測りかねたが、取りなしをするつもりで
夜烏 (新字旧仮名) / 平出修(著)
木偶之坊でくのばうこしらへれば、内職ないしよくにお玉杓子たまじやくしつたでがす。獅子頭しゝがしら閻魔様えんまさま姉様あねさまくびの、天狗てんぐめん座頭ざとうかほ白粉おしろひればべにもなする、青絵具あをゑのぐもべつたりぢや。
神鑿 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
姉様あねさまを呼んでおいで
家:02 (下) (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
可哀かわいやの、姉様あねさまたち。わしもとを離れてもの、蜘蛛男くもおとこに買われさっしゃるな、二股坂ふたまたざかくまいぞ。」
国貞えがく (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
風にもめげずにみんな駆出すが、ああいう児だから、一人で、それでも遊戯さな……石盤へこう姉様あねさまの顔をいていると、硝子戸越がらすどごしに……夢にも忘れない……その美しい顔を見せて
朱日記 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
真黒まっくろな影法師のちぎれちぎれな襤褸ぼろて、茶色の毛のすくすくとおおわれかかる額のあたりに、皺手しわでを合わせて、真俯向まうつむけに此方こなたを拝んだ這身はいみばばは、坂下のやぶ姉様あねさまであった。
悪獣篇 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
ここで坂下の姉様あねさまは、夫人の前髪に手をさし入れ、白き額を平手ででて
悪獣篇 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
が、綺麗きれい姉様あねさま待飽倦まちあぐんだそうで、どやどやと横手の壇をり懸けて
妖術 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
納戸なんどへ入って、戸棚から持出した風呂敷包ふろしきづつみが、その錦絵にしきえで、国貞くにさだの画が二百余枚、虫干むしぼしの時、雛祭ひなまつり、秋の長夜ながよのおりおりごとに、馴染なじみ姉様あねさま三千で、下谷したや伊達者だてしゃ深川ふかがわ婀娜者あだもの沢山たんといる。
国貞えがく (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
轆轤首ろくろくびさ、引窓ひきまどからねてる、見越入道みこしにふだうがくわつとく、姉様あねさまかほ莞爾につこりわらふだ、——切支丹宗門キリシタンしうもんで、魔法まはふ使つかふとふて、おしろなかころされたともへば、行方知ゆくへしれずにつたともふ。
神鑿 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
屏風びょうぶを立てて、友染の掻巻かいまきでおねんねさせたり、枕を二つならべたり、だったけれど、京千代と来たら、玉乗りに凝ってるから、片端かたっぱしから、姉様あねさまも殿様も、あかい糸や、太白で、ちょっとかがって
開扉一妖帖 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
こんなところへ、ぬしなんとしてまた姉様あねさま人形にんぎやうれてさつせえた。
神鑿 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
錦絵にしきえ姉様あねさまだあよ、見ねえな、みんな引摺ってら。」
海異記 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
「御手本は何です、姉様あねさまの顔ですか。」
婦系図 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)