じょ)” の例文
旧字:
几董きとうの俳句に「晴るる日や雲を貫く雪の不尽」といふがあり、極めて尋常にじょし去りたれども不尽の趣はかへつて善く現れ申候。
歌よみに与ふる書 (新字旧仮名) / 正岡子規(著)
ひと口にいえば、三国志は曹操に始まって孔明に終る二大英傑の成敗争奪の跡をじょしたものというもさしつかえない。
三国志:12 篇外余録 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
互いに死生を共にし合った往年の英傑児同志が、一方は天下の頭山翁となり、一方は名もなき草叢裡そうそうり窮措大きゅうそだい翁となり果てたまま悠々久濶きゅうかつじょする。
近世快人伝 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
さて住職奥田墨汁おくだぼくじゅう師をとぶらって久闊きゅうかつじょした。対談の間に、わたくしが嶺松寺と池田氏の墓との事を語ると、墨汁師は意外にもふたつながらこれを知っていた。
渋江抽斎 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
じょするに際し伝にも明瞭めいりょう記載きさいけてあるためにその原因や加害者を判然と指摘してきし得ないのが残念であるが
春琴抄 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
なにもしていない、お茶を呑んで久闊きゅうかつじょしていたところだったと答えると、その風呂敷包を拡げてみろと云った。私はこの時はじめてハハアと合点が入った。
西隣塾記 (新字新仮名) / 小山清(著)
私は酒は飲まんけれどもここは駅場しゅくばでよい酒があるという話じゃから一番よい酒をあなたに上げて久濶きゅうかつの情をじょしたいと思う、どうです私の居る所に来ないか
チベット旅行記 (新字新仮名) / 河口慧海(著)
もし久濶きゅうかつじょしたいお思召ぼしめしがあるなら、早速さっそくひきわせしようと思いますが、如何でしょうか。
振動魔 (新字新仮名) / 海野十三(著)
妾が烏滸おこそしりを忘れて、えて半生の経歴をきわめて率直に少しく隠す所なくじょせんとするは、あながちに罪滅ぼしの懺悔ざんげえんとにはあらずして、新たに世と己れとに対して
妾の半生涯 (新字新仮名) / 福田英子(著)
故友に於ては最も王達善おうたつぜんしたしむ。故に其の王助教達善おうじょきょうたつぜんによすの長詩の前半、自己の感慨行蔵こうぞうじょしてまず、道衍自伝としてる可し。詩に曰く
運命 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
この辟易へきえきすべき多量の形容詞中から、余と三歩のへだたりに立つ、たいななめにねじって、後目しりめに余が驚愕きょうがく狼狽ろうばい心地ここちよげにながめている女を、もっとも適当にじょすべき用語を拾い来ったなら
草枕 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
一般に知り尽されていることであり、数ページの短文にその波瀾重畳はらんちょうじゅうの生涯をじょすることは困難でもあるので、しばらくベートーヴェンの生涯を特色づける、興味深い逸話をつづり合せて
楽聖物語 (新字新仮名) / 野村胡堂野村あらえびす(著)
殊に今の洋服を着た菊五郎などは、余りよく私の友だちに似ているので、あの似顔絵にがおえの前に立った時は、ほとんど久闊きゅうかつじょしたいくらい、半ば気味の悪い懐しささえ感じました。どうです。
開化の良人 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
金を与えたという事実は同一なるが、これをじょするに裁判官の用いた言葉と友人の用いたる言葉とは非常に違っている。してこの差の起こるゆえんはまったく心の置き所が異なるからである。
自警録 (新字新仮名) / 新渡戸稲造(著)
少女をえがき、空想を生命とした作者が、あるいは砲煙ほうえんのみなぎる野に、あるいは死屍ししの横たわれる塹壕ざんごうに、あるいは機関砲のすさまじく鳴る丘の上に、そのさまざまの感情と情景をじょした筆は
田舎教師 (新字新仮名) / 田山花袋(著)
安藤先生は久濶きゅうかつじょして卒業を祝した後
負けない男 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
几董きとうの俳句に「晴るる日や雲を貫く雪の不尽」というがあり、極めて尋常にじょし去りたれども不尽の趣はかえって善く現れもうし候。
歌よみに与ふる書 (新字新仮名) / 正岡子規(著)
当時の実状を誌した「魔釈記ましゃくき」の原文はもっともよくその間の状況を伝え、こう二者の英傑の一面にある風情をもよくじょしていて余すところがない。
黒田如水 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
その林駒生氏が嘗てこれも座談の名士として聞えた長兄、杉山茂丸氏と福岡市吉塚三角在みすみざい、中島徳松氏の別荘に会し、久濶きゅうかつじょし、夕食の膳に就いた。
近世快人伝 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
彼は千代子という女性にょしょうの口を通して幼児の死を聞いた。千代子によってじょせられた「死」は、彼が世間並に想像したものと違って、美くしいを見るようなところに、彼の快感をいた。
彼岸過迄 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
十四年、帝程済ていせいに命じて従亡伝じゅうぼうでんを録せしめ、みずからじょつくらる。十五年史彬しひん白龍庵に至る、あんを見ず、驚訝きょうがして帝をもとめ、つい大喜庵たいきあんい奉る。十一月帝衡山こうざんに至りたもう、避くるある也。
運命 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
句のしまりたるところ半ば客観的にじょしたるところなど注意すべく「神風や」の五字も訳なきようなれど極めて善く響き居候。
歌よみに与ふる書 (新字新仮名) / 正岡子規(著)
「……鎌倉殿のお仕打しうちです。くに、鎌倉殿のご推挙によって、あの無能な蒲殿かばどのさえ、参河守みかわのかみに任官され従五位下にじょせられておるではございませんか」
源頼朝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
引っ張られたのは初さんに引っ張られたのかと思う読者もあるかもしれないが、そうじゃない。そう云う気分が起ったんで、強いて形容すれば、疝気せんきに引っ張られたとでもじょしたら善かろう。
坑夫 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
と、じょし、輿こしながえは輝政と秀勝。信長の位牌は、秀吉自身が、それを持ったことを明らかにしている。
新書太閤記:08 第八分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
糜竺びじく兄弟は、さっそく通って、二夫人にえっし、また、関羽に会って、こもごも、久濶きゅうかつの情をじょした。
三国志:06 孔明の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
従四位下にじょされ、左近衛さこんえの少将に任ぜられたという——厄介なお坊ちゃんであると知れたのである。
大岡越前 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
仁和寺にんなじの御幸も、あと十日ほどしかない。院の武者所むしゃどころは、その日のしたくに忙しかった。清盛は、こんど初めて、六位の布衣ほいじょせられて、御車の随身ずいしんを仰せつかった。
金品ばかりでなく、彼はこのなかに、自己の気魄きはくを輸血する気をもっていた。さきに彼は、朝廷の恩命があっても拝辞はいじしたが、こんどはすすんで参議さんぎに任官し、従三位にじょせられた。
新書太閤記:05 第五分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
やがて皇太子も御元服となられたのをしおに、姫を入内させた。立后りっこうはべつであるが、尚侍ないしのかみじょせられ、お添い臥しはかなうのである。麗景殿でんにおかれたので「麗景殿ノ女御にょうご」ともよばれた。
美しい日本の歴史 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
正四位ノ右衛門佐うえもんのすけじょし、越後守とし、あわせて上野こうずけ播磨はりまを下さる。
正三位左兵衛さひょうえかみじょされ、八座の宰相さいしょう(参議)の御一人にも挙げられ、殿上人てんじょうびとの列にも列せられてみると、置文のお誓いなど、自然お心からうすらいでしまうのは、人情自然かともぞんじますが
私本太平記:10 風花帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
この秋、藤原忠平は、摂政をかねて、太政大臣にじょせられた。
平の将門 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
李粛も、久濶きゅうかつじょして
三国志:02 桃園の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
左近衛さこんえノ中将にじょ
私本太平記:10 風花帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)