なら)” の例文
ある時、正成の故事にならって、糞合戦くそがっせんを計画した。それを格子のところで実行した。母も、親戚も、村の人も散々な足利勢あしかがぜいであった……
家:02 (下) (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
「万人の鏡」と云ふ意味は万人のクリストにならへと云ふのではない。たつた一人のクリストの中に万人の彼等自身を発見するからである。
続西方の人 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
この一家の醜体を現に子供に示して、明らかにこれにならえと口に唱えざるも、その実は無辜むこの小児を勧めて醜体に導くものなり。
教育の事 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
またそのかたへにてわれらの組を飾る焔はピエートロ即ちかの貧しき女にならひ己が寶を聖なる寺院に捧げし者なり 一〇六—一〇八
神曲:03 天堂 (旧字旧仮名) / アリギエリ・ダンテ(著)
衆人追々おいおい支那欧亜の唱歌を聴き、韻踋に一段の妙趣あることを知り得ば、その趣にならい、邦語をもって新曲を製すること、また難からざるべし。
国楽を振興すべきの説 (新字新仮名) / 神田孝平(著)
「利慾のために商人の通過し得る処何ぞ基督の愛に励まさるる宣教師の通過し得ざるの理あらんや」といいつつ亜弗利加あふりか大陸を横断せしになら
基督信徒のなぐさめ (新字新仮名) / 内村鑑三(著)
おほきな子供こどもはそれつといつて惡戯いたづらそれとらうとする。子供等こどもら順次じゆんじみなそれにならはうとする。さうするとちひさな小供こどもたゞいたやうにく。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
自分は人々にならって、堤腹にあしを出しながら、帰路かえりには捨てるつもりで持って来た安い猪口にが酒をいで呑んだ。
野道 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
それにしてもどういう風に三十六品の献立をしましょうか、それがなかなか大変です。エート、やっぱり支那料理にならって四いろずつとしましょうか。
食道楽:春の巻 (新字新仮名) / 村井弦斎(著)
第二、亀の背に歌書きたるは何のためか、いたづらの遊びか、何かのまじなひか、あるいは紅葉題詩といふ古事にならひて亀に恋のなかだちでも頼みたる訳か。
墨汁一滴 (新字旧仮名) / 正岡子規(著)
主人ははしとも楊枝ようじとも片のつかないもので、無雑作むぞうさに饅頭を割って、むしゃむしゃ食い始めた。宗助もひんならった。
(新字新仮名) / 夏目漱石(著)
われわれはつとめてこの害をめるようにせねばならぬと思うが、僕はけっして英米人をそのままならってふうせよとはかつても言ったこともない。
自警録 (新字新仮名) / 新渡戸稲造(著)
ことに清澄の茂太郎は、この口合いを喜んで、例の出鱈目でたらめを日本語で唄い終っては、その最後へ、これにならって
大菩薩峠:37 恐山の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
伏しておもう、それがししつうしなって鰥居かんきょし、門にって独り立ち、色に在るのかいを犯し、多欲のきゅうを動かし、孫生そんせいが両頭の蛇を見て決断せるにならうことあたわず
牡丹灯籠 牡丹灯記 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
そして少しも動かないで死んだふりをしてゐる。狩人でなくても、見張りにはそんな辛抱が要るのだ。吾々も其のお手本にならつて、次ぎの勝負を待たう。
のち文化辛未年かのとひつじのとし宿屋飯盛が撰したる『狂歌作者部類』は政演の『五十人一首』にならひたるものなるべし。狂歌はそもそもその当初より名所を咏ずるに適す。
江戸芸術論 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
両家はこの篇には、勿論、外套氏と寸毫すんごうのかかわりもない。続いて、仙女香、江戸の水のひそみにならって、私が広告を頼まれたのでない事も断っておきたい。
古狢 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
のみならず、上にならう下で、地方官はかえって蝦夷人を虐待して、私利をのみ図るという有様でありましたから、一旦従っていたものもだんだん背いて参ります。
本州における蝦夷の末路 (新字新仮名) / 喜田貞吉(著)
市兵衛はもと林氏であつた。昔林道栄が官梅を氏とした故事にならつて游竜を氏とし、役向其他にもこれを称した。長崎の人は游を促音に唱へて、「ゆりう」と云ふ。
伊沢蘭軒 (新字旧仮名) / 森鴎外(著)
われは只だ衆のなすところにならひて、共に拍手したるのみ。少女をとめは又輕快なる舞の曲を彈じ出せり。男客をとこきやくの三人四人は、急にかたはらなる婦人をいざなひて舞ひはじめたり。
流石さすがに短刀や仕込杖などは、講中の例にならって携帯しませんが、幸に何等の異変もなく明治の末年まで登山を続けて、初めて都会の文化式登山の人達と接触したので
登山談義 (新字新仮名) / 木暮理太郎(著)
来たのは工事専用の汽車で、それがまだ普請中ふしんちゆうのステーションの側でとまると、屈強な機関手と其見習が機関車を飛降りて、突然いきなり飯屋へ駈付ける。ほかの連中も其例にならふ。
椋のミハイロ (新字旧仮名) / ボレスワフ・プルス(著)
若い臣下たちや、まだ志を得ないでいる青年たちがそれにならった。またたく間に、孔子の門前は市をなすに至った。そして彼の名声は日に日に高くなるばかりであった。
論語物語 (新字新仮名) / 下村湖人(著)
師父自ら十二名の貧民の足を洗つてキリシトの例にならひ、つゞいて信者は行列を組んでヂシビリナで身体を打ち血を流しながら罪を悔いる誠を表はして寺院に繰込んだが
名門豪戸競うて之を玩味がんみし給うとは雖も、その趣旨たるや、みだりに重宝珍器を羅列して豪奢を誇るのひんならわず、閑雅の草庵に席を設けて巧みに新古精粗の器物を交置し
不審庵 (新字新仮名) / 太宰治(著)
此事室町殿の頃武家の俗習ぞくしふよりおこりて、農商もこれにならひてやゝおこなはれし事物に見えたり。
同氏に同劇場の脚本を一任し、巴里パリーグラン・ギニョール座にならい探偵趣味、怪奇趣味の芝居で当てるつもりであったところ、当初の三四回の成功を見たのみで爾後一向に振わず
二重心臓 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
私の覚束ない筆の写生や模写と並んで、達者な線の絵があると思つて見ると、夫れは松年先生の絵で、日出新聞揷絵の筆法にならふとか云ふ文句が、矢張り先生の筆跡で傍書してあつたりする。
写生帖の思ひ出 (新字旧仮名) / 上村松園(著)
それに朱子が春秋にならって書いたという事につき、『書法』『発明』というがあって、褒貶の意のある処をそれぞれ説いてあるから、いよいよ面白く思って、他の書物をもいろいろ読んだが
鳴雪自叙伝 (新字新仮名) / 内藤鳴雪(著)
しかるに都下とか繁昌につれて、追々食店多くなりし中に、明和のころ深川洲崎の料理茶屋は、升屋祝阿彌ますやしゆくあみといふ京都風にならひたるべし、此者夫婦の機を見る才あり、しかも事好、廣座敷、二の
花火と大川端 (旧字旧仮名) / 長谷川時雨(著)
と橋口君は牧野さんにならって早速直接行動を取ることに決定した。
好人物 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
私もそれにならって礼拝をしてそこで余程感慨に打たれたです。
チベット旅行記 (新字新仮名) / 河口慧海(著)
へて、大勝利たいしようりためしなら
鬼桃太郎 (旧字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
また地には、かしこの惡しき人々さへむるばかりの——かれらむれどかゞみならはず——わが記念かたみを遺しぬ。 一六—一八
神曲:03 天堂 (旧字旧仮名) / アリギエリ・ダンテ(著)
古人が杜詩を詩史と称えし例にならわば曙覧の歌を歌史ともいうべきか。余が歌集によりてその人の事蹟じせきと性行とを知り得たるもその歌史たるがためなり。
曙覧の歌 (新字新仮名) / 正岡子規(著)
主人しゆじんはしとも楊枝やうじともかたかないもので、無雜作むざふさ饅頭まんぢゆうつて、むしや/\はじめた。宗助そうすけひんならつた。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
壁には四幅しふく金花箋きんかせんを貼って、その上に詩が題してある。詩体はどうも蘇東坡そとうば四時しじならったものらしい。書は確かに趙松雪ちょうしょうせつを学んだと思う筆法である。
奇遇 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
兄も矢張やはり先輩にならうて算盤そろばんの高尚な所まで進んだ様子です。この辺は世間の儒者と少し違うようだが、その他は所謂いわゆる孝悌こうてい忠信で、純粋の漢学者に相違ない。
福翁自伝:02 福翁自伝 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
右の隣席に当家の姫君玉江嬢あり、今日こそ西洋の交際法にならいて婦人のために食事の世話をなし、運好くば姫君の選びに預からんとひそかに機会を待っている。
食道楽:冬の巻 (新字新仮名) / 村井弦斎(著)
朝から見物に出掛けた……この初阪とは、伝え聞く、富士、浅間、大山、筑波つくば、はじめて、出立いでたつを初山ととなうるにならって、大阪の地へ初見参ういけんざんという意味である。
南地心中 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
余ノ詩ニオケルヤもとヨリ遊戯ノミ。人生ハ寄ルガ如キナリ。唯意ニ適スルヲ貴ブ。ひんならヒ臭ヲフニ何ゾ必シモ抵死ていしセンヤ。ソレ詩ノ道タルヤ切実ヲ美ト為ス。
下谷叢話 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
且つ峰から峰へわたり歩くことが案外に困難でないことを認め、野営用具、食糧品等を携帯する不便を忍びて縦走を決行し、成功を収めたので、之にならう者が続出し
山の今昔 (新字新仮名) / 木暮理太郎(著)
わたくしは師岡未亡人に、壽阿彌の妹の子が二人共蒔繪まきゑをしたことを聞いた。しかし先づ蒔繪を學んだのは兄鈴木で、師岡は鈴木のかたはらにあつてそのす所にならつたのださうである。
寿阿弥の手紙 (旧字旧仮名) / 森鴎外(著)
われは彼輩かのともがらのなすところにならひき。そは我意志の最も強き方に從ひたるのみ。我意馬をはしらしめて、その往くところに任するときは、我はかの友だちに立ちおくるゝ憂なかりしなり。
奇貨おくべしというので大倉喜八郎の牛缶にならって、軍需品としての魚の缶詰製造を思い立ったが、慣れない商売の悲しさ、缶の製造業者に資本を喰われて、忽ち大失敗の大失脚。
近世快人伝 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
唐の弘法寺ぐほうじの僧の釈迦才しゃくかさいの浄土論中に、安楽往生者二十人を記したのにならったものであるが、保胤往生の後、大江匡房おおえのまさふさは又保胤の往生伝の先蹤せんしょうを追うて、続本朝往生伝をせんしている。
連環記 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
博勞ばくらうさん一つやつゝけつかな」かね博勞ばくらうは一こゑことおほきく呶鳴どなつたとおもつたら茶碗ちやわんさけを一くちにぐつとして兩手りやうて茶碗ちやわんせて、いたにぱか/\ぱか/\とひづめならうて拍子ひやうしつたひゞきてながら
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
大勝利を得しためしなら
鬼桃太郎 (新字新仮名) / 尾崎紅葉(著)
しかりといえども、世の中の事物は悉皆しっかい先例にならうものなれば、有力の士はつとめてそのさきがけをなしたきことなり。
旧藩情 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
凡そ人その思ふ所を伝へんとするや必ずしも田舎議員の如く怒号する事を要せざるべし。何ぞまた新しき女にならつてやたらに告白しむやみに懺悔ざんげするに及ばんや。
矢はずぐさ (新字旧仮名) / 永井荷風(著)