麩屋町ふやまち)” の例文
そこは平田門人仲間に知らないもののない染め物屋伊勢久いせきゅうの店のある麩屋町ふやまちに近い。正香自身が仮寓かぐうするころもたなへもそう遠くない。
夜明け前:03 第二部上 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
麩屋町ふやまちから新京極は目と鼻の間だった。うっかりしているとすぐ足を踏まれそうな人出で、こゝは毎晩斯うだそうだ。
ぐうたら道中記 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
その時は正岡子規まさおかしきといっしょであった。麩屋町ふやまち柊屋ひいらぎやとか云う家へ着いて、子規と共に京都のよるを見物に出たとき、始めて余の目に映ったのは、この赤いぜんざいの大提灯である。
京に着ける夕 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
京都麩屋町ふやまちの染め物屋で伊勢久いせきゅうと言えば理解のある義気に富んだ商人として中津川や伊那地方の国学者で知らないもののない人の名が、この正香の口から出る。
夜明け前:01 第一部上 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
友だちが世話になったと書いてよこした京都麩屋町ふやまちの染め物屋伊勢久いせきゅうとは、先輩暮田正香くれたまさかの口からも出た平田門人の一人ひとりで、義気のある商人のことだということを知った。
夜明け前:02 第一部下 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
幸い京都麩屋町ふやまち伊勢久いせきゅうは年来懇意にする染め物屋であり、あそこの養子も注文取りに美濃路みのじを上って来るころであるから、それまでにあつらえる品をそろえて置きたいと言った。
夜明け前:04 第二部下 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
縫助は三条の方角をさして、正香と一緒に麩屋町ふやまちから寺町の通りに出ながら
夜明け前:03 第二部上 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)