“鰈(がれい)” の例文
真っ暗な床の上に、乾(ほ)し鰈(がれい)のように、俯ッ伏(ぷ)していた郁次郎は、悪夢からさめたように、ふと、頭だけをもたげた。
牢獄の花嫁 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
そうかと思う、兆(しるし)を見せて下すった、天道様の思召(おぼしめし)じゃ、まんざら、熱海を海になすって、八兵衛鯛(だい)、理右衛門鰈(がれい)、鉄蔵鰒(ふぐ)、正助章魚(だこ)なんぞに、こちとらを遊ばそうというわけでもあるまい。
わか紫 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
病人は、干(ほ)し鰈(がれい)のように平たくなって、昏睡(こんすい)していた。枕元には、煎(せん)じ薬(ぐすり)も見えない。うす寒い空気と壁があるだけで、台所にも、一粒の米粒すらなさそうである。
治郎吉格子 (新字新仮名) / 吉川英治(著)