魚油ぎょゆ)” の例文
その霧のなかに、ブランブランと、人魂ひとだまのようにゆれている魚油ぎょゆのあかり。ギリギリ、ギリギリと帆綱ほづなのきしむ気味の悪さ……
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
職人しょくにんたちは、みんなおもてで仕事をしていました。あるところでは、魚油ぎょゆをにたてていましたし、またあるところでは、皮をなめしていました。またべつのところでは、なわをなっていました。
おばあさんは、魚油ぎょゆランプのそばに立って、さかなを焼いていました。トナカイは、おばあさんに、ゲルダのことをすっかり話しました。もっとも、それよりもさきに、自分のことを話しました。
さかやきの浪人であります。年二十七、八、肩幅のわりに痩身そうしんではあるが、浅黒い皮膚には精悍せいかんな健康が魚油ぎょゆを塗ったようにみなぎっている。
江戸三国志 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
呂宋兵衛るそんべえは、その時のっそり突っ立って、魚油ぎょゆのあかりに照らしだされている二十四、五人の荒くれ男をめまわした。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
老婆としよりの声が聞え、彼女は、あわてて中へかくれた。むさい漁師小屋だった。魚油ぎょゆともすとみえ、臭いのにおいがして、家の中に、黄色い明りがついた。
春の雁 (新字新仮名) / 吉川英治(著)