鬱金色うこんいろ)” の例文
「そうかねえ……」と、自分は彼女のニコニコした顔とあかい模様や鬱金色うこんいろの小ぎれと見くらべて、くすぐったい気持を感じさせられた。
死児を産む (新字新仮名) / 葛西善蔵(著)
「そればかりじゃありません。この二三日、鬱金色うこんいろ扱帯しごきだの、鹿子絞こしぼりの下締したじめだの、変なものが百本杭や永代へ流れ着くそうですよ」
日の当る砂丘の蔭に浜防風が鬱金色うこんいろの芽を出していた。娘は細い指先でそれを摘まみ集めながら私にいった。
健康三題 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
窓の下に、黒っぽい粗末な茶箪笥があって、古い鑵を幾つも見せていたが、その上には、紫檀の盆の中に、薄手うすでの上品な茶碗と錫の茶托ちゃたくとが、鬱金色うこんいろの布巾の下から覗いていた。
反抗 (新字新仮名) / 豊島与志雄(著)
鬱金色うこんいろ縮緬ちりめんたすきをかけて、派手やかな模様の振り袖を着て、深紅の手甲と脚絆とをつけた、妖艶な女の煙術師姿の、若いお粂が台へ突っ伏して、髪のかんざしの銀のビラビラを、後れ毛と一緒に顫わせて
娘煙術師 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
「そればかりじゃありません。この二三日、鬱金色うこんいろ扱帯しごきだの、鹿子絞こしぼりの下締したじめだの、変なものが百本杭や永代へ流れ着くそうですよ」