驚目きょうもく)” の例文
去年天正十年の初夏から、ことし十一年の夏までの間に、秀吉の位置は、秀吉自身すら、内心、驚目きょうもくしたであろう程な飛躍をげた。
新書太閤記:10 第十分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
寺院には似げもない長物ながものを、思いもかけぬ人の手で見せられて、さやを払って見るといっそう驚目きょうもくに価するのは、その刀が最近において、まさしく人を斬った覚えのある刀に相違ないと見たからです。
大菩薩峠:23 他生の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
「小牧以来、紀州、四国と打ちつづく御陣務には、景勝も、蔭ながら、お手さばきに、驚目きょうもくをもって、遠くから拝見しておりました」
新書太閤記:11 第十一分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
ガボ、ガボ、と真ッ黒な液体が腹の中へ波を打って流れ込んで行く様は、理窟を考える暇なく、ただ、驚目きょうもくみはらせてしまった。
醤油仏 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
ああ、さてはと、いちどは驚目きょうもくをみはった万吉も鴻山こうざんも、弦之丞の言外にある心を汲んで、ひそかに思った。
鳴門秘帖:06 鳴門の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
と、なだれをうってあつまった人かげへ、なにごとかと、あたらしい驚目きょうもくをみはっている。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
渺茫びょうぼうとした迷宮に疑心をさまよい、万吉も、それへ驚目きょうもくをみはったまま、ゴクリと、生唾なまつばをのんでいるばかり……まったく、いうべき言葉を忘れているとは瞬間、二人の姿であった。
鳴門秘帖:02 江戸の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「ヤ、ヤッ?」——と総立ちに、驚目きょうもくをみはる。
鳴門秘帖:04 船路の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)