駛走しそう)” の例文
また明治の初年食物店や興行物でそのたもとが埋められた頃の橋と比べ、更に今の電車や自動車の駛走しそうしている橋と比べ
日本橋附近 (新字新仮名) / 田山花袋(著)
其下は青藍色の迅流が対岸に斜に横たわる大岩床の表面とすれすれに駛走しそうしている。川幅は五間とはあるまいと思った。深淵の底は蒼黒く沈んで深さが測られない。
黒部川を遡る (新字新仮名) / 木暮理太郎(著)
こう思って暫くたたずんで居ると、やがて吾妻橋の方の暗闇くらやみから、赤い提灯ちょうちんの火が一つ動き出して、がらがらがらと街鉄がいてつき石の上を駛走しそうして来た旧式な相乗りのくるまがぴたりと私の前で止まった。
秘密 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
駛走しそうする自動車の中で、竜太郎はいっしんに叫びつづけていた。
墓地展望亭 (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
跳躍し、潜水し、駛走しそうするもの
フレップ・トリップ (新字新仮名) / 北原白秋(著)
藍靛らんてんの水が一道の迅流となって、百仭の谷底を駛走しそうするに至って、始めて壮絶凄絶の極に達する。
渓三題 (新字新仮名) / 木暮理太郎(著)