飛交とびか)” の例文
娘の帯の、銀の露の秋草に、円髷の帯の、浅葱あさぎに染めた色絵の蛍が、飛交とびかって、茄子畑なすばたけへ綺麗にうつり、すいと消え、ぱっと咲いた。
貝の穴に河童の居る事 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
数百尺の下は真白に笹縁を取った碧海で、鈍い銀色に光る岩の間を、岩燕がヒラリヒラリと飛交とびかうのさえ、此世のものとも覚えぬ凄まじい大景観です。
が、嘗ての日のあれほど矢のように飛交とびかった俥の影は? ……なつかしい、馴染のふかいあの俥の影は……?
春泥 (新字新仮名) / 久保田万太郎(著)
巣立すだちのころか、羽音はおとつて、ひら/\と飛交とびかはす。
木菟俗見 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)