顱頂部ろちょうぶ)” の例文
あごひげと眉とが純白で、耳から耳まで白髪が輪取り、顱頂部ろちょうぶが美しくはげている。身にまとったはゆるやかな道服、形はまさしく唐風である。
剣侠受難 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
そして残りの毛髪を一つに纏めて、円く、平に、顱頂部ろちょうぶから耳朶じだの上へ被らせているのが、大黒様の帽子のようです。
痴人の愛 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
木曾の道中は、御岳おんたけおろしが、いかにこの剃下げの顱頂部ろちょうぶにしみ込んで、幾夜、宵寝の夢を寒からしめたことか。
大菩薩峠:30 畜生谷の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
その皮膚の色は銅色をていし、あちこちからうみが流れていた。顱頂部ろちょうぶにある一掴みの髪が、紙のように白く変色しているのも、悪病のさせた業であろう。
神州纐纈城 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
ほとんど平土間の三分の二まではガラきになっていてほんの舞台に近い方に人がかたまっている中に、顱頂部ろちょうぶ禿げた老人の頭とつやつやしいお久の円髷まるまげとが遠くの方から眼についていたが
蓼喰う虫 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
一つは顱頂部ろちょうぶからあごへかけて、一つは額から後頭部へかけて巻いてあった。
細雪:02 中巻 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)