顔色いろ)” の例文
旧字:顏色
代はり目毎のお演劇しばい行きも、舞台よりは、見物の衣裳に、お眼を注がせらるる為とやら。そんな事、こんな事に、日を暮らしたまふには似ぬ、お顔色いろの黒さ。
したゆく水 (新字旧仮名) / 清水紫琴(著)
さと顔打ちあかめて、ランプの光まぶしげに、目をそらしたる、常にはあおきまで白き顔色いろの、今ぼうっと桜色ににおいて、艶々つやつやとした丸髷まるまげさながら鏡と照りつ。
小説 不如帰  (新字新仮名) / 徳冨蘆花(著)
もしもしと細い声でわたくしを呼起しますから、何心なく枕をあげてると、年齢としは十八九頭は散し髪で顔色いろの蒼ざめた女、不思議な事には頭から着物までビショ湿れに湿ぬれしおれた女が
お住の霊 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
くれ去り あした来たりて 顔色いろふるびぬ
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「ほほほお嬢——あらまた、御免遊ばせ、お奥様のいいお顔色いろにおなり遊ばしましたこと! そしてあんなにお唱歌なんぞお歌い遊ばしましたのは、本当にお久しぶりでございますねエ」
小説 不如帰  (新字新仮名) / 徳冨蘆花(著)
靴音くつおと高く、ステッキ打ち振りつつ坂を上り来し武男「失敬、失敬。あ苦しい、走りずめだッたから。しかしあったよ、ステッキは。——う、浪さんどうかしたかい、ひどく顔色いろが悪いぞ」
小説 不如帰  (新字新仮名) / 徳冨蘆花(著)