頷付うなず)” の例文
僕は相手の気勢をくじくつもりで、その言出すのを待たず、「お金のはなしじゃないかね。」というと、お民は「ええ。」とあご頷付うなずいて
申訳 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
中島はお千代の事についてはあまり深く問われたくないので、ただ頷付うなずきながら四、五枚の封筒に同じ名宛を書きつづけている。
ひかげの花 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
「なるほど。」と蘿月は頷付うなずいて、「そういう事なら打捨うっちゃっても置けまい。もう何年になるかな、親爺おやじが死んでから……。」
すみだ川 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
男は道子が口から出まかせに何を言うのかというような顔をして、ウムウムと頷付うなずきながら、重そうな折革包おりかばんを右と左に持ちかえつつ、手を引かれて橋をわたった。
吾妻橋 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
長吉は丁度茶を飲みかけた処なので、頷付うなずいたまま、口に出して返事はしなかった。
すみだ川 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
住職は頷付うなずいて折から手桶ておけしきみと線香とを持って来た寺男に掃除すべき墓石を教え示して静に立ち去った。わたくしは墓地一面に鳴きしきるせみの声を聞きながらおもむろに六基の古墳を展した。
下谷叢話 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
「ええ。いいわ。」と玉子は頷付うなずいて、「おとまりね。」
ひかげの花 (新字新仮名) / 永井荷風(著)