響灘ひびきなだ)” の例文
温泉宿も一軒きり、古ぼけた二階家を青ペンキで塗ってある。いて取り柄をいえば、縹渺ひょうびょうたる響灘ひびきなだを望む景色のよさと、魚の新しさくらいのものであろう。
花と龍 (新字新仮名) / 火野葦平(著)
必ずしも清水とか岩とかいう小さな地物には限らず、時としてはかなり広々とした延長をもっていることもあるが、その境界の不定であることは、玄海げんかいとか響灘ひびきなだとかいう海上の地名と同じい。
地名の研究 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
芦をわたる暗い風には、響灘ひびきなだのとどろきがある。
私本太平記:11 筑紫帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
ぐんぐんと、沖合を目ざし、島を遠ざかって行くと、響灘ひびきなだの水平線のうえに、ぎらぎらと照りかえす純白の入道雲が、絢爛けんらんたる行列をつくって、雲部隊の進軍のようである。
花と龍 (新字新仮名) / 火野葦平(著)
丘を登り、丘を降る合間に、林の間から、ちらちらと、真青な響灘ひびきなだが散見した。
花と龍 (新字新仮名) / 火野葦平(著)
響灘ひびきなだは玄海灘とつづいているが、白島しらしま付近は魚と貝類の宝庫だ。そこへ二、三年前、一月の寒い風に吹かれながら、ソコブク釣りに出かけた。河豚のおいしいのは十二月から一月までである。
ゲテ魚好き (新字新仮名) / 火野葦平(著)