音響ひびき)” の例文
それを上りつめたとき、三人は、省線電車の間断なく馳せちがう音響ひびきを脚下に、田端へつゞく道灌山の、草の枯れた崖のうえに立った。
春泥 (新字新仮名) / 久保田万太郎(著)
この時大天文台からは、非常信号が掛かって、会堂の一隅に置かれたる大鐘は、物凄い音響ひびきを以て、聴衆の耳朶じだを烈しく打った。
太陽系統の滅亡 (新字新仮名) / 木村小舟(著)
あっちでもブウブウ、こっちでもブウブウ、その内にゴーゴーと遠雷のような音響ひびき、山岳鳴動してかなり大きな地震があった。
本州横断 癇癪徒歩旅行 (新字新仮名) / 押川春浪(著)
奈何どうしたのか、鍛冶屋の音響ひびきも今夜はいつになく早く止んだ。高く流るる天の河の下に、村は死骸の様に黙してゐる。
赤痢 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
「不思議な風が出てきて琴の音響ひびきを引き立てている気がします。どうしたのでしょう」
源氏物語:26 常夏 (新字新仮名) / 紫式部(著)
渺茫びょうぼうたる広野ひろのの中をタタタタとひづめ音響ひびき
伯爵の釵 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
轟然たる物の音響ひびきの中、頭を圧する幾層の大廈たいかに挾まれた東京の大路を、苛々いらいらした心地ここちで人なだれに交つて歩いた事、両国近い河岸かし割烹店レストーラントの窓から、目の下を飛ぶ電車、人車
鳥影 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
渺茫びょうぼうたる曠野ひろのの中をタタタタとひづめ音響ひびき
伯爵の釵 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
と言つてる時、思ひがけなくも轢々ごろごろといふ音響ひびきが二人の足に響いた。
鳥影 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)