こはぜ)” の例文
決め込んでたなあ、足袋のこはぜと言い、それ、お前のぱっちの血形といい、佐平どん、あっしゃあ、お前のわざ白眼にらむがどうでえ?
と取ったが、繻子張しゅすばりのふくれたの。ぐいと胴中どうなかを一つ結えて、白のこはぜで留めたのは、古寺で貸す時雨の傘より、当時はこれが化けそうである。
式部小路 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
こはぜも掛けずに足袋たび穿いたまま玄関まで送って出ると、悦子がしきりに兎の一方の耳を持って立てようとしていた。
細雪:01 上巻 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
こう節子は岸本に話しかけながら、母の側で片膝かたひざずつ折曲げるようにして、谷中まで行って来た足袋のこはぜを解いた。
新生 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
すそだけが四色よいろの波のうねりを打って白足袋のこはぜを隠す。
虞美人草 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
そのこはぜを掛ける時に、昔はひものついた足袋たびのあったことを思い出した。その足袋の紐を結んで、水天宮さまのお参りにでもなんでも出掛けたことを思い出した。そんな旧いことが妙に彼女の胸へ来た。
食堂 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
こはぜが一つありますめえ。」