鞍馬石くらまいし)” の例文
青苔あをごけの美しくした、雨落のところに据ゑた、まがい物ながら大きい鞍馬石くらまいしの根に、ポカリと小さい穴があいてゐるのです。
一巡ひとまわりして来て、蹂口に据えてある、大きい鞍馬石くらまいしの上に立ち留まって、純一が「ひるから越して来てもいのですか」と云うと、蹲のそばこけにまじっている、小さい草をつまんで抜いていた婆あさんが
青年 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
「奧樣は、御氣性がすぐれていらつしやいますので、夜中でも必ず外の手洗鉢てうづばちでお手を清められます。雨戸を一枚開けてあげますと、鞍馬石くらまいしの手洗鉢から、御自分で水をおくみになつて——」
少し離れた鞍馬石くらまいしの巨大な沓脱くつぬぎの外、小さいひさしの雨落に添って、これも生湿りの土の上に、明らかな凹んだ跡は、坊主頭というよりは、むしろ尻餅を突いた跡か、肩のあたりを打った跡でしょう。
銭形平次捕物控:245 春宵 (新字新仮名) / 野村胡堂(著)