しな)” の例文
晴れても曇っても、冬が日一日と溶け去るけはいは争われなかった。街路樹の梢は、いつかしなやかなたわみを持ち始めた。
伸子 (新字新仮名) / 宮本百合子(著)
アラブ馬のもっともむべき特性は、その動作のしなやかな点で、他にこれよりも美麗駿速な馬種なきにあらざるも、かくまで優雅軽捷けいしょう画のごとく動く馬なし。
ずいぶんしずかなみどりでしょう。風にゆらいでかすかに光っているようです。いかにもその柄が風にしなっているようです。けれどもじつは少しも動いておりません。
チュウリップの幻術 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
浅瀬につけた追鮎箱の中で、肥つた生きのいゝそいつは青黒い美しい背をたえまなく左右に動かしながら、きれいな水に洗はれて、たとへやうもなくしなやかに強く見えた。
医師高間房一氏 (新字旧仮名) / 田畑修一郎(著)
それは娘の頃のまとまりのない柔さではなく、成熟したしなやかな柔味だつた。
医師高間房一氏 (新字旧仮名) / 田畑修一郎(著)