しな)” の例文
桜草はそのしなやかな緑色のじくをしずかにゆすりながらひとの聞いているのも知らないでうひとりごとを云っていました。
若い木霊 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
本より末に至るに随ひ漸く其間しゞまり、竹の育ちすらりとして捩れも無く癖も無く、特に穂竿のかたからず弱からずしてしなやかに能く耐ふる力の八方に同じきなど
鼠頭魚釣り (新字旧仮名) / 幸田露伴(著)
夏の白雨は、しなやかな梢にふりそそぎ、一葉一葉に玉のしずくを綴って、幹を太らす助けとなりました。春秋いく度か去来して、今仰ぎみるその樹の雄々しさはどうでしょう。
つまりこういう作中の名句には、王朝の世の節奏リトムがおのずから現われていて、殊に作者の心から発しる一種のしなやかな身振ジェストが、読者の胸をでさするために、名状すべからざる快感が生じるのである。
『新訳源氏物語』初版の序 (新字新仮名) / 上田敏(著)
まだ十歳の、しなやかな鹿を、アッチケの8850
牧人のしなやかではりきった体は、泉に自分の圧力の快さを知らせました。
何故! 手脚はしなやかに舞わないのか
五月の空 (新字新仮名) / 宮本百合子(著)