雅馴がじゅん)” の例文
この二つは突差の用語だからもっと雅馴がじゅんなものがあれば改めるが、つまり限界と面積とを持つ地名と、単にあのあたりと指していうのみで
地名の研究 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
南郭龍門の二家は不忍池の文字の雅馴がじゅんならざるを嫌って其作中には之を篠池と書している。星巌及び其社中の詩人は蓮塘と書し又杭州の西湖に擬して小西湖と呼んだ。
上野 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
余は書においては皆無鑒識かいむかんしきのない男だが、平生から、黄檗おうばく高泉和尚こうせんおしょう筆致ひっちを愛している。隠元いんげん即非そくひ木庵もくあんもそれぞれに面白味はあるが、高泉こうせんの字が一番蒼勁そうけいでしかも雅馴がじゅんである。
草枕 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
明治の初年詩文の流行を極めた頃、小野湖山は向島の文字を雅馴がじゅんならずとなし、其音によって夢香洲むこうしゅうの三字を考出したが、これも久しからずして忘れられてしまった。
濹東綺譚 (新字新仮名) / 永井荷風(著)