陽炎ようえん)” の例文
そこをドナウはゆるくうねり、銀いろに光って流れている。そのながれが遠く春の陽炎ようえんのなかに没せむとして、絹糸きぬいとの如くに見えている。
ドナウ源流行 (新字新仮名) / 斎藤茂吉(著)
浴客はまだ何処にも輻湊ふくそうしていなかったし、途々みちみち見える貸別荘の門なども大方はしまっていて、松が六月の陽炎ようえん蒼々あおあおと繁り、道ぞいの流れの向うに裾をひいている山には濃い青嵐せいらんけぶってみえた。
あらくれ (新字新仮名) / 徳田秋声(著)