陰翳くもり)” の例文
いかに神のようなお師匠さまの眼にも何かの陰翳くもりが懸かっているのではあるまいかと、彼も一度は疑った。
玉藻の前 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
蟇の如く胡坐をかいた男は、紙莨たばこの煙をゆるやかに吹いて、静かに海を眺めて居る。くぼんだ眼窩めつぼの底に陰翳くもりのない眼が光ツて、見るからに男らしい顔立かほだての、年齢としは二十六七でがなあらう。
漂泊 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)