陣場じんば)” の例文
報によれば、予定していた名島なしまから松ヶ崎の重要な高地には、意外にも、はや敵が陣場じんばを占めている模様であるという。
私本太平記:11 筑紫帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
この日を戦の祝いと称して弓箭きゅうせんもてあそぶのは、何か雛祭と調和せぬようであるにもかかわらず、太平洋に面した陸中の釜石に陣場じんば遊びがあり、その南隣の気仙けせんでは
年中行事覚書 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
台紙の裏に本人自筆のペン字でこう云う事項を記載した手札型の写真が、幸子の女学校時代の同窓である陣場じんば夫人から郵送されて来たのは三月の下旬頃のことであった。
細雪:01 上巻 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
吉左衛門なり金兵衛なりは他の宿役人を誘い合わせ、羽織はおりに無刀、扇子せんすをさして、西の宿境しゅくざかいまでそれらの一行をうやうやしく出迎える。そして東は陣場じんばか、峠の上まで見送る。
夜明け前:01 第一部上 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
妙義山麓みょうぎさんろく陣場じんばはらに集合した暴徒を指揮して地主高利貸警察署などをほふった兇徒の一人として、十年に近い牢獄生活を送り、出獄後は北海道の開墾に従事したり、樺太からふとへ往ったり
雨夜続志 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)