)” の例文
富之助は其間に漁夫町に出たが、他に時をす處がないから、釣道具を賣る店に寄つた。そこの息子は彼の小學校友達である。
少年の死 (旧字旧仮名) / 木下杢太郎(著)
「そうだっけな、李白の詩に、酒を飲んでうれいさんとすれば愁更に愁う、というのがあったっけ、あれなんだな」
大菩薩峠:36 新月の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
掛取に頭脳あたまを使ったりするのがわずらわしくなると、着飾って生家さとや植源へ遊びに出かけるか、なじみの多いもとの養家の居周いまわりやその得意先へ上って話こむかして、時間をさなければならなかった。
あらくれ (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
僕は幾度も小説を書き損ねて、この一週間を無駄にしてしまつた。それは憂鬱なことだつた。ああこの孤独を、僕はどうすればいいのだらう、この薬のやうな孤独を。濡れた庭で蟋蟀が啼く。
測量船拾遺 (新字旧仮名) / 三好達治(著)
どうしても豊公の威と徳とをしたがる政策に出でたのは是非もありません——そこで、この土地の住民に於ても、豊公の余威をなるべく隠そう隠そうとつとめたような形跡もないではない
大菩薩峠:37 恐山の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)