銘酒めいしゅ)” の例文
(略)店は二間間口にけんまぐちの二階造り、のきには御神燈ごじんとうさげてしお景気よく、空壜あきびんか何か知らず銘酒めいしゅあまた棚の上にならべて帳場ちょうばめきたる処も見ゆ。
桑中喜語 (新字旧仮名) / 永井荷風(著)
旅の女が酒を造って、それを見ず知らずの人にも売ってあるいたことが、諸国銘酒めいしゅの根本となった例も多いのである。
木綿以前の事 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
酒屋の払いもきちんきちんと現金で渡し、銘酒めいしゅ本鋪ほんぽから、看板を寄贈きぞうしてやろうというくらいになり、蝶子の三味線もむなしく押入れにしまったままだった。
夫婦善哉 (新字新仮名) / 織田作之助(著)
宋君そうくん。ご存知でしょうが、ここで飲ませるのが、純粋な江州産の銘酒めいしゅですよ。つまりこの芳醇ほうじゅんですな。天下の酒徒なら“玉壺春ぎょっこしゅん”の名を知らぬものはありません。
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
是が銘酒めいしゅという語の起原である。酒は本来は女の造るものときまっていたのに、こういう銘酒の産地が、多くは婦人と縁のない寺方てらかたであったということは、ちょっと珍しい現象である。
木綿以前の事 (新字新仮名) / 柳田国男(著)