鉾尖ほこさき)” の例文
騒ぎは人々の口から耳へ、耳から口へと静まった身屋むやを包んで波紋のように拡った。やがて贄殿の内外は、兵士たちの鉾尖ほこさきのために明るくなった。
日輪 (新字新仮名) / 横光利一(著)
なんの気もなく空を見れば、鉾尖ほこさきたけ白馬しらまたけとの間に、やや赤味を帯びた雲が一流れ、切れてはつづき、つづいては切れて、ほかの大空はいっぱいに金砂子きんすなごいた星の夜でありました。
大菩薩峠:05 龍神の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
鋭利なる懐疑の刃をすべての者に揮うた君は、とどろく胸を抑えて、氷なす鉾尖ほこさきを、われらの友情にザクリと突き立てた。その大胆なる態度と、純潔なる思索的良心には私は深厚なる尊敬を捧げる。
愛と認識との出発 (新字新仮名) / 倉田百三(著)
その懐疑の鉾尖ほこさきを向けねばならぬ性質のものであった。
性急な思想 (新字新仮名) / 石川啄木(著)
それに続いて、血に塗られた奴国の兵の鉾尖ほこさきが、最初の朝日の光りを受けてきらめきながら、森の方へ揺れて来た。
日輪 (新字新仮名) / 横光利一(著)
「その怨霊が雲になって、この日高郡の空へ現われる、それ、あちらに見える鉾尖ほこさきたけから、こちらに遠く白馬しらまたけまで、一筋の雲がずーっと長く引いた時は大変だ、それが今いう、清姫様の帯だ」
大菩薩峠:05 龍神の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)