野禽やきん)” の例文
本来、野獣、野禽やきん、魚類は生活のために大層な努力を費やす。食物を得るために死物狂いとなり、外敵を防ぐために頭を使う。
季節の味 (新字新仮名) / 佐藤垢石(著)
それ野禽やきんを林園に馴れ養わんと欲せばまずこれを籠中ろうちゅうに収めざるべからず。籠中は決して野禽目的の地にあらざるなり。
将来の日本:04 将来の日本 (新字新仮名) / 徳富蘇峰(著)
そうして歩きだしたと思うと、そんな婆あと遊ぶんじゃないよ、と言いすて、野禽やきんのようにけたたましい笑い声をたてながら階段を調子をとって駈け降りて行った。
禅僧 (新字新仮名) / 坂口安吾(著)
幾多の野禽やきん、家畜、それと一匹の犬を、自分の慰みに、または他人の手助けに殺したことがある。
にんじん (新字新仮名) / ジュール・ルナール(著)
お蘭は、世の中の雑音には極めておびえ易く唯一人、自分だけ静な安らかな瞳を見せる野禽やきんのような四郎をいじらしく思った。彼女はこの人並でないものに何かといたわりの心を配ってやった。
みちのく (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
滅多めったに散歩の人影なく、唯名も知れぬ野禽やきんの声を聞くばかりである。
放水路 (新字新仮名) / 永井荷風(著)