野晒のざら)” の例文
彫りも見ごと、啖呵たんかも見事、背いちめんの野晒のざらし彫りに、ぶりぶりと筋肉の波を打たせて、ぐいと大きくあぐらをきました。
「よくごらんなされ、ここが——」と十左衛門は杖で地面を打った、「ここが七十郎の死躰したいを捨てたところです、七十郎はここで、野晒のざらしになったのですぞ」
誰にも知られず誰にも顧みられず、あのように静かに死ねるものなら……彼は散歩の途中、いつまでも野晒のざらしになっている小さな死骸を、しみじみとながめるのだった。
永遠のみどり (新字新仮名) / 原民喜(著)
「大体そんなものでございますが、また、そんな簡単な理由わけからでもございません。どうせ只今限り、野晒のざらしとなるお身の上、かいつまんで回向えこうがわりにお話し致してしまいましょう。実はなんで……」
江戸三国志 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「山者は仕方がないわ、野晒のざらしさ、あたしだってね。」
そこらにち果てた野晒のざらしとも違うようです。
生々流転 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)