重傷いたで)” の例文
戸をひしめかして、男は打ちたおれぬ。あけに染みたるわが手を見つつ、重傷いたでうめく声を聞ける白糸は、戸口に立ちすくみて、わなわなとふるいぬ。
義血侠血 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
その歩々ほほおとせし血は苧環をだまきの糸を曳きたるやうに長くつらなりて、畳より縁に、縁より庭に、庭より外に何処いづこまで、彼は重傷いたでを負ひて行くならん。
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
わが身二の重傷いたでのために碎けしとき、われは泣きつゝ、かのよろこびて罪を赦したまふものにかへれり 一一八—一二〇
神曲:02 浄火 (旧字旧仮名) / アリギエリ・ダンテ(著)
それはキリストの心に重傷いたでを負わせる者だからである。——ここに磨臼と言われたものは、女が手でひく小さい磨臼ではなく、驢馬ろばにひかせる大きな磨臼です。