遂々たうたう)” の例文
残部あとは二三日と云つたのが、遂々たうたう十日も延びたので、下宿のアノ主婦が少し心配して居つた外、これぞと云ふ事も思出せなかつた。
病院の窓 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
『竹山さん。』と、遂々たうたうこらへきれなくなつて渠は云つた。悲し気な眼で対手を見ながら、顫ひを帯びて怖々おづおづした声で。
病院の窓 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
と、眠気が催すまでに悪落着がして来て、悠然ゆつたりと改めて室の中を見廻したが、「敷島」と「朝日」と交代にしきりに喫ひながら、遂々たうたうゴロリと横になつた。
病院の窓 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
エ? 左様さう々々、君はまだ御存じなかつたんだ。罷めましたよ、遂々たうたう。何でも校長といふ奴と、——僕も二三度見て知つてますが、鯰髯なまづひげの随分変梃へんてこ高麗人かうらいじんでネ。
雲は天才である (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
遂々たうたう追出してやつた、ハハヽヽ。』と笑ひ乍ら坐つたが、張合の抜けた様な笑声であつた。そして
札幌 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
考へて考へて、去年東京から来た時の経験もあるし、尤も余り結構な経験でもありませんが、仕方が無いから思ひ切つて、乞食をして国まで帰る事に遂々たうたう決心したんです。
雲は天才である (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
その時はまだ私の心も単純であつた。既にその劇しい戦ひの中へ割込み、底から底と潜り抜けて、遂々たうたう敗けて帰つて来た私の今の心に較べると、実際その時の私は、単純であつた——
札幌 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
凌雲閣には余り高いのに怖気おぢけ立つて、遂々たうたう上らず。吾妻橋に出ては、東京では川まで大きいと思つた。両国の川開きの話をお吉に聞かされたが、甚麽どんな事をするものやら遂に解らず了ひ。
天鵞絨 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
さうして又歩くともなく歩き出して、遂々たうたう此処まで来てしまつた。
(新字旧仮名) / 石川啄木(著)
遂々たうたう雀部は大きな呿呻あくびをした。
(新字旧仮名) / 石川啄木(著)