迸出ほうしゅつ)” の例文
彼の結論の茫漠ぼうばくとして、彼の鼻孔から迸出ほうしゅつする朝日の煙のごとく、捕捉ほそくしがたきは、彼の議論における唯一の特色として記憶すべき事実である。
吾輩は猫である (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
近松は、あれほど沢山の浄瑠璃を書かざるを得なかった程、義理人情の枠を突破する現実の人間性の迸出ほうしゅつを当時の社会にあって感覚したのである。
いや一人はいる。宗純そうじゅん和尚(一休)がそれだ。あの人の風狂には、何か胸にわだかまっているものが迸出ほうしゅつを求めて身悶みもだえしているといったおもむきがある。気の毒な老人だ。
雪の宿り (新字新仮名) / 神西清(著)
叢林そうりんは大地を肉体として、そこから迸出ほうしゅつする鮮血である。くれない極まって緑礬りょくばんの輝きをひらめかしている。物の表は永劫えいごうの真昼に白みわたり、物陰は常闇世界とこやみせかい烏羽玉うばたまいろをちりばめている。
河明り (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
いや一人はゐる。宗純そうじゅん和尚(一休)がそれだ。あの人の風狂には、何か胸にわだかまつてゐるものが迸出ほうしゅつを求めて身悶みもだえしてゐるといつたおもむきがある。気の毒な老人だ。
雪の宿り (新字旧仮名) / 神西清(著)