近所合壁きんじょがっぺき)” の例文
「君は無絃むげん素琴そきんを弾ずる連中だから困らない方なんだが、寒月君のは、きいきいぴいぴい近所合壁きんじょがっぺきへ聞えるのだからおおいに困ってるところだ」
吾輩は猫である (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
「これは爺さんに、すこし遠慮してもらわなくッちゃならねえようだ。人間は近所合壁きんじょがっぺき、いっしょに住む。なア、いかに好きな道でも、度をはずしては……」
丹下左膳:03 日光の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
近所合壁きんじょがっぺき、親類中の評判で、平吉がとこへ行ったら、大黒柱より江戸絵を見い、という騒ぎで、来るほどに、たかるほどに、とん片時かたときも落着いていたためしはがあせん。
国貞えがく (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
と、新七の住居に留まっていたのであるが、彼女がこの伊丹にも少ないほど目につくきりょうであるために、まず細工場の大勢の者の口から、ひいては近所合壁きんじょがっぺき
黒田如水 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
自分以外の無機物、有機物を同化して、自己を増大し分裂すると同時に、その分裂した近所合壁きんじょがっぺきの細胞同志に、お互いの感覚や意識を反射交感させ合う霊能までも一緒に持っていたのだ。
ドグラ・マグラ (新字新仮名) / 夢野久作(著)
元来この主人は近所合壁きんじょがっぺき有名な変人で現にある人はたしかに神経病だとまで断言したくらいである。
吾輩は猫である (新字新仮名) / 夏目漱石(著)